講演情報

[P21-1-1]術前化学療法を施行した膿瘍形成性S状結腸癌の9例

岩田 至紀, 田中 千弘, 末次 智成, 渡邉 卓, 小森 充嗣, 長尾 成敏, 河合 雅彦 (岐阜県総合医療センター外科)
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本邦における切除可能進行結腸癌(StageII/III)に対する標準治療は,手術±術後補助化学療法であり,術前化学療法は標準治療ではない.当科では膿瘍形成を伴う切除困難局所進行S状結腸癌(直腸S状部癌を含む)に対して人工肛門造設後に術前化学療法を行っている.今回我々は,2013年4月から2023年12月に当院で治療開始となった大腸癌のうち,術前化学療法を施行した膿瘍形成性局所進行S状結腸癌(StageII/III)の9例を経験したため報告する.【症例】年齢は平均69.4(56-78)歳,男性6例,女性3例.主座はSが6例,RSが3例.cT4bが7例,cT4aが2例.腫瘍径は平均73.3(55-107)mmで全例に膿瘍形成を認めた.全例で人工肛門造設後に術前化学療法を施行した.レジメンはCAPOXが2例,FOLFOXIRIが5例,CAPOX+bevacizumabが1例,FOLFOX+panitumumabが1例.腫瘍の縮小率は中央値35.0(10-57)%,全例で膿瘍は消失した.初診時のPNI値は平均37.2(27.9-45.8)に対して術前化学療法後は平均45.5(39.6-52.5)であった.全例で根治手術を行い,5例は同時に人工肛門閉鎖を行った.手術時間は平均301(216-396)分,出血量は平均956(400-2333)mlであった.1例は他病死したが,再発症例はなく,8例で無再発生存中である.膿瘍形成性局所進行S状結腸癌に対する人工肛門造設後の術前化学療法は腫瘍径の縮小,膿瘍の消失,PNIの改善に期待ができ,安全に治療が完遂できると考えられた.