講演情報

[R18-1]S状結腸癌手術後に生じた下腸間膜動静脈瘻の1例

小菅 誠1, 大熊 誠尚1, 後藤 圭佑1, 岡本 敦子1, 髙野 靖大1, 小山 能徹1, 阿部 正1, 中野 貴文1, 榎 啓太朗2, 蘆田 浩一2, 武田 泰裕1, 衛藤 謙1 (1.東京慈恵会医科大学外科学講座, 2.東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
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症例
 68歳男性.S状結腸癌に対して202X年に腹腔鏡下S状結腸切除術(D3郭清)を施行した.その後問題なく経過し,術後11日目に退院となった.病理結果ではstage Iであり,定期経過観察となった.術後4か月後ごろより頻回の粘液便および排便障害が出現し,その後血便も認めたため入院となった.血液検査ではわずかにCRPの上昇を認めるのみであったが,腹部CTでは吻合部から直腸にかけて著明な腸管浮腫と周囲脂肪織の混濁像を認めた.またDynamic CTの早期層で拡張した上直腸静脈が造影されることから下腸間膜動静脈瘻(AVF)が疑われた.血管造影検査を施行したところ,下腸間膜動脈(IMA)からの分枝末梢部に下腸間膜静脈切離断端近傍とのAVFを認め,塞栓術を施行した.その後自覚症状は改善傾向となり,粘液便の回数は徐々に減少したため退院となり,現在も外来経過観察中である.
 考察
 腸間膜領域のAVFの報告は少なく,その中でもIMA領域に生じた報告例はまれである.AVFの原因としては先天性と後天性のものに分けられるが,後天性のものでは医原性(外傷や手術後)によるものが多い.本邦におけるIMA領域のAVFについての過去の症例報告(会議録除く)は14例と少なく,このうち手術後に生じたものは8例のみであった.症状はAVFの部位や血流量などによって,腹痛・粘液便・下痢・下血などのほか,腫瘤様の浮腫状腸管の触知,門脈圧亢進症を呈するものまで多彩である.治療法としては,血栓によるものなどでは保存的に軽快した報告も少数あるが,多くの場合まず画像下治療が検討される.しかしfeederが多く存在するものや進行性に増悪する症例では手術治療が必要となることも多いため,まれな疾患であるが早期に診断し,病態にあった治療法の選択が重要である.
 まとめ
 今回我々は下腸間膜AVFの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.