講演情報
[P3-1-2]硫黄代謝菌と大腸癌の臨床・分子病理学的特徴
島村 智1, 藤吉 健司1, 主藤 朝也1, 久田 かほり1, 執行 ひろな1, 菊池 真亜子1, 仕垣 隆浩1, 吉田 直裕1, 合志 健一1, 吉田 武史1, 星子 裕貴2, 奥野 未来2, 小椋 義俊2, 藤田 文彦1 (1.久留米大学外科学講座, 2.久留米大学医学部感染医学講座基礎感染症部門)
背景:腸内細菌は大腸癌の発癌や腫瘍増殖・進展に影響を与えている.発癌物質である硫化水素は,硫黄代謝菌(SMB)により硫黄含有食品(加工肉・高脂肪食)の代謝で産生される.過剰な硫化水素は,腸粘膜バリア機能低下を引き起こし腸管上皮細胞の炎症やDNA損傷に影響すると報告されている.しかし,腫瘍微小環境における発癌との関連については明らかにされていない.本研究では大腸癌組織においてSMBと臨床および分子病理学的因子の関連を検討した.
方法:2020年1-12月に大腸癌に対し原発巣切除を施行した64例の腫瘍部と正常粘膜部の各組織から抽出したDNAを用いた.硫黄代謝を司るdsrA遺伝子に特異的なプライマーを使用し,PCR法を用いてSMBの存在を評価した.SMB陽性群と陰性群の臨床・分子病理学因子を比較検討した.
結果:SMB陽性群は,正常部と比較し腫瘍部に多かった(腫瘍部で37例[58%]vs 正常粘膜部で15例[23%],P<0.01).腫瘍部におけるSMB陽性群 vs 陰性群で年齢・性別・腫瘍部位・進行度・腫瘍マーカーに有意差は認めなかった.KRAS変異型がSMB陽性群において多かった(陽性群7例[35%]vs 陰性群2例[7%],P=0.01)が,BRAF遺伝子変異・腫瘍免疫リンパ球(CD3/CD8陽性リンパ球)浸潤に有意差は認めなかった.
考察:本検討で糞便でなく組織を用いてSMBと大腸癌の関連を検討した.SMBは腫瘍部に多く存在し,SMBの存在と大腸癌は関連している可能性が示唆された.SMB陽性群はKRAS変異型と関連しており,SMBの腫瘍促進性炎症経路とKRASを介した腫瘍増殖経路が関連している可能性が示唆された.
結語:SMBが存在する大腸癌はKRAS経路と関連する可能性がある.
方法:2020年1-12月に大腸癌に対し原発巣切除を施行した64例の腫瘍部と正常粘膜部の各組織から抽出したDNAを用いた.硫黄代謝を司るdsrA遺伝子に特異的なプライマーを使用し,PCR法を用いてSMBの存在を評価した.SMB陽性群と陰性群の臨床・分子病理学因子を比較検討した.
結果:SMB陽性群は,正常部と比較し腫瘍部に多かった(腫瘍部で37例[58%]vs 正常粘膜部で15例[23%],P<0.01).腫瘍部におけるSMB陽性群 vs 陰性群で年齢・性別・腫瘍部位・進行度・腫瘍マーカーに有意差は認めなかった.KRAS変異型がSMB陽性群において多かった(陽性群7例[35%]vs 陰性群2例[7%],P=0.01)が,BRAF遺伝子変異・腫瘍免疫リンパ球(CD3/CD8陽性リンパ球)浸潤に有意差は認めなかった.
考察:本検討で糞便でなく組織を用いてSMBと大腸癌の関連を検討した.SMBは腫瘍部に多く存在し,SMBの存在と大腸癌は関連している可能性が示唆された.SMB陽性群はKRAS変異型と関連しており,SMBの腫瘍促進性炎症経路とKRASを介した腫瘍増殖経路が関連している可能性が示唆された.
結語:SMBが存在する大腸癌はKRAS経路と関連する可能性がある.