講演情報

[R10-2]直腸癌手術におけるdiverting loop ileostomyの前向き観察研究

鈴木 陽三1, 三代 雅明2, 大里 祐樹3, 西村 潤一4, 中田 健5, 賀川 義規4, 畑 泰司6, 宗方 幸二7, 鄭 充善8, 澤田 元太9, 吉岡 慎一10, 高橋 佑典11, 波多 豪12, 荻野 崇之12, 三吉 範克12, 山本 浩文12, 村田 幸平6, 植村 守12, 土岐 祐一郎12, 江口 英利12 (1.市立豊中病院消化器外科, 2.札幌医科大学消化器・総合,乳腺・内分泌外科, 3.大阪急性期・総合医療センター消化器外科, 4.大阪国際がんセンター消化器外科, 5.市立東大阪医療センター消化器外科, 6.関西労災病院外科, 7.市立池田病院消化器外科, 8.大阪労災病院外科・消化器外科, 9.市立伊丹病院外科・消化器外科, 10.八尾市立病院外科, 11.国立病院機構大阪医療センター消化器外科, 12.大阪大学消化器外科)
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【背景】直腸癌手術時に臨床的縫合不全の重症化予防目的で作成されるdiverting loop ileostomyの向きを回転させるべきか否かについては,口側腸管を尾側に誘導させることで遮断効果を上げるべきとする考えがある一方で,口側腸管を尾側に誘導しても遮断効果に差は無く小腸閉塞が増加するとする報告もあり議論の余地がある.そこでわれわれは,直腸癌手術における腸管回転の有無を含むdiverting loop ileostomy造設手技と小腸閉塞発症率の関連について研究した.【方法】本研究は多施設前向き観察研究として行った.24施設の直腸腺癌と診断され,待機手術として腹腔鏡下あるいはロボット支援で,低位前方切除術あるいは括約筋間切除術を施行し,同時にdiverting loop ileostomyを造設する予定のある患者を対象とした.2015年7月から2021年4月の間に451人が前向きに登録された.主要評価項目はdiverting loop ileostomyの向きと腸閉塞の発生率の関連,二次的評価項目は手術関連因子,周術期合併症発症率,ストーマ関連合併症発症率とした.【結果】diverting loop ileostomyを作成しなかった90人,データの欠落した18人,開腹移行した11人,腸閉塞歴・小腸切除歴のあった6人,大腸全摘を行った1人,同意を撤回した1人を除く324人について解析を行った.小腸閉塞は非回転群で23人(9.2%),回転群で9人(12%)にみられたが統計学的有意差は認めなかった(P=0.509).小腸閉塞の危険因子として,皮膚切開長,皮膚切開法(直線・円),筋膜切開長,筋膜切開法(直線・円),回盲弁からの距離,係蹄回転の有無,口側腸管高,肛門側腸管高について検討した.統計学的有意差が認められた唯一の因子は回盲弁からの距離(≦30cm vs 30cm<)で,それぞれ16人(7.3%),16人(15.4%)に腸閉塞を認めた(P=0.028).【結論】diverting loop ileostomyの向きは小腸閉塞発症に有意な影響は及ぼさないことが分かった.