講演情報
[VWS3-2]当院における腹腔鏡下直腸固定術(縫合固定)
伊禮 靖苗, 中村 寧, 高野 正太, 福永 光子, 田中 正文, 佐伯 泰愼, 大原 真由子, 水上 亮佑, 米村 圭介, 松本 朝子, 玉岡 滉平, 吉元 智子, 吉元 崇文, 辻 順行, 山田 一隆 (大腸肛門病センター高野病院)
直腸脱の治療として当院では脱出長5cm以上,骨盤臓器脱を認める症例,若年者,経腹術希望症例などを原則経腹術としている.近年ventral mesh rectopexy(以下VMR)の治療成績が集積されその有用性も指摘されるが,当院ではmeshによる合併症軽減の観点から腹腔鏡下のsuture rectopexy(以下SR)を第一選択としてきた.患者選択にあたっては腹腔鏡が可能かどうかをまず考慮する.高度な亀背では小腸の落ち込みにより視野確保に苦慮するため注意が必要である.アプローチは臍をカメラポートとした5ポートで行う.右下腹部のポート位置は仙骨縫合しやすいようにやや頭側にする.腹膜の切開は岬角の位置より切開し,尿管下腹前筋膜前面を背側に向かって剥離する.直腸間膜の背側の剥離はS4枝,挙筋を目安とする.右側方は直腸間膜との境界が不鮮明なことが多いため,直腸前壁の剥離を行い,最後に背側との整合性を合わせて剥離する.右中直腸動脈は必要時切離する.L5/S1間の椎間板前面の前縦靱帯を露出し非吸収糸で2針固定する.2020年4月から2023年3月の期間で単一術者によるSR手術症例は58症例であった.平均年齢81.4(45-96)歳,男性5例,女性53例,直腸脱手術術後再発症例16例でうち1例はSR再発症例.骨盤臓器脱の合併を48例に認めた.平均手術時間は170分.併用術式は子宮付属器切除3例,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術1例,痔瘻根治術1例,肛門皮垂切除1例に認めた.観察期間平均は472(12-1118)日で,再発は5例(8.6%)に認めた.骨盤臓器脱の合併と再発に関連は認めず,男性に有意に多く認めた(P=0.0089).再発症例は直腸側縫合固定の漿膜筋層脱落が疑われた.