講演情報
[PD5-2]大腸癌研究会のpT1ノモグラム因子の妥当性―大腸癌登録データを用いた検証
梶原 由規1, 上野 秀樹1, 小林 宏寿2,5, 杉原 健一3,5, 味岡 洋一4,5 (1.防衛医科大学校外科学講座, 2.帝京大学医学部附属溝口病院外科, 3.東京科学大学, 4.新潟大学医学部医学科臨床病理学, 5.大腸癌研究会)
【背景・目的】局所摘除が施行されたpT1大腸癌における追加治療の適応判断に資するため,大腸癌研究会「pT1大腸癌のリンパ節転移の国際共同研究」プロジェクトにてリンパ節(LN)転移予測ノモグラムを構築した(Gastrointestinal Endoscopy 2023).本ノモグラムでは大腸癌治療ガイドラインで示されている4つのリスク因子(SM浸潤度,脈管侵襲,組織型,簇出)以外に性別,腫瘍占居部位の2因子が含まれ,組織型やSM浸潤度には新たなカテゴリーが設けられている.これらの妥当性を大腸癌研究会の大腸癌登録データを用いて検証した.
【方法】登録されたpT1癌15,248例(1991-2011年)のうち,多発大腸癌,特殊組織型,前治療施行例などを除く12,470例を対象とした.LN郭清を施行した11,802例中1265例にLN転移を認め,追加郭清しなかった668例中44例にLN再発を認めた.これら1309例(10.5%)をLN転移陽性例として解析した.
【結果】(1)性別:女性のLN転移率は13.3%であり,男性(8.7%)より有意に高率であった(Odds比 1.6,p<0.0001).(2)占居部位:LN転移率はTが6.8%と最も低率で,A(9.0%),C(9.1%),D(9.5%),S(10.8%),Rb(10.8%),RS(11.8%)の順に高くなり,Raが13.6%で最も高率であった.ノモグラムにおけるカテゴリー別に評価した場合,Tを基準とするLN転移のOdds比はA/C/Dで1.3,S/Rbで1.7,RS/Raで2.0であり,いずれも有意に高値であった(それぞれP=0.016,P<0.0001,P<0.0001).(3)組織型:主組織型がpor/muc/sigのLN転移率は28.2%と高率であった.それ以外の症例をpT1ノモグラムと同様にtub2とpap/tub1に分類した場合,前者のLN転移率は16.0%で後者(7.9%)に比較して有意に高率であった(Odds比 2.2,p<0.0001).(4)SM浸潤度:SM浸潤度が登録された2324例についてpT1ノモグラムのカテゴリー別に評価したところ,LN転移率は1000μm未満で4.6%,1000μm以上2000μm未満で8.7%(Odds比 2.0,p=0.015),2000μm以上で12.0%(同2.8,p<0.0001)であった.
【結語】大腸癌登録の多数の症例を用いた検証検討においてpT1ノモグラムに採用された因子とカテゴリーの妥当性が確認された.
【方法】登録されたpT1癌15,248例(1991-2011年)のうち,多発大腸癌,特殊組織型,前治療施行例などを除く12,470例を対象とした.LN郭清を施行した11,802例中1265例にLN転移を認め,追加郭清しなかった668例中44例にLN再発を認めた.これら1309例(10.5%)をLN転移陽性例として解析した.
【結果】(1)性別:女性のLN転移率は13.3%であり,男性(8.7%)より有意に高率であった(Odds比 1.6,p<0.0001).(2)占居部位:LN転移率はTが6.8%と最も低率で,A(9.0%),C(9.1%),D(9.5%),S(10.8%),Rb(10.8%),RS(11.8%)の順に高くなり,Raが13.6%で最も高率であった.ノモグラムにおけるカテゴリー別に評価した場合,Tを基準とするLN転移のOdds比はA/C/Dで1.3,S/Rbで1.7,RS/Raで2.0であり,いずれも有意に高値であった(それぞれP=0.016,P<0.0001,P<0.0001).(3)組織型:主組織型がpor/muc/sigのLN転移率は28.2%と高率であった.それ以外の症例をpT1ノモグラムと同様にtub2とpap/tub1に分類した場合,前者のLN転移率は16.0%で後者(7.9%)に比較して有意に高率であった(Odds比 2.2,p<0.0001).(4)SM浸潤度:SM浸潤度が登録された2324例についてpT1ノモグラムのカテゴリー別に評価したところ,LN転移率は1000μm未満で4.6%,1000μm以上2000μm未満で8.7%(Odds比 2.0,p=0.015),2000μm以上で12.0%(同2.8,p<0.0001)であった.
【結語】大腸癌登録の多数の症例を用いた検証検討においてpT1ノモグラムに採用された因子とカテゴリーの妥当性が確認された.