講演情報

[R19-3]鉗子で繋ぐ痔核切開線―過不足ない痔核根治術の工夫―

助川 晋作, 中田 拓也, 大島 康介 (北毛保健生活協同組合北毛病院)
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‹はじめに›痔核根治術の要点は,脱出や出血を主訴とする肛門上皮の切除,血管や肥厚した線維組織の切除,一方で肛門の機能温存と形態温存を意識した切開や剥離であり,患者の愁訴に則った過不足のない治療である.そのため,肛門上皮の切除デザインの工夫や痔核のアンダーマインを行うことで理想的な手術が施行できると考える.当院では,佐原が行なった痔核上極をペアン鉗子で把持する手技にアレンジを加え,アンダーマインにも工夫を加えているため,その手技を提示する.
‹手術方法と工夫›痔核根治術のほとんどは薬剤を使用しない結紮切除半閉鎖術を行なっており,2泊から3泊4日の入院治療,腰椎麻酔下ジャックナイフ体位を基本としている.狭窄や痔核の程度を確認し,大きいものより開始.皮下,括約筋内への局所麻酔投与の後,狭く皮膚切開.外痔核は無理のない範囲で核出.残存皮膚をペアンで把持,皮下から歯状線裏の支持組織を切離,剥離し,引き出しつつ歯状線まで皮膚切開.付着してくる筋組織は完全に露出しないよう剥離し,落とす.痔動脈を触知し,痔核上極をぺアンで把持.上皮を張って脱出の主座となる上皮を取り除けるよう切開し,切除する上皮に付随する痔核組織を可及的にアンダーマイン.根部を3-0バイクリルで刺入結紮.上皮断端の止血はなるべく行わず,それ以外の組織からの止血を行い,上皮を連続縫合.皮膚をトリミングし,腫れた外痔核があれば核出し,適度なドレナージ創になるまで皮膚縫合し,終了.
‹結語›痔核上極をぺアンで把持する工夫は,上皮を張ることでデザインを決めやすくなることや上皮に付随する痔核組織を核出しやすくなること,また後方から環状に脱出する痔核の切開方向に注意する場合や,前方で深く行きすぎないよう目安としても使用できるなど有用性は大きい.実際のビデオを交えて解説する.