講演情報

[O8-1]右側結腸癌に対するロボット支援下手術における体腔内吻合での感染性合併症対策

渋谷 雅常1, 福岡 達成1, 笠島 裕明1, 丹田 秀樹1, 米光 健1, 福井 康裕1, 関 由季1, 北山 紀州1, 西村 潤也2, 井関 康仁2, 西居 孝文2, 井上 透2, 前田 清1 (1.大阪公立大学大学院消化器外科, 2.大阪市立総合医療センター外科)
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【背景】
 結腸体腔内吻合は授動範囲が小さいだけでなく体外への腸管挙上時に生じる静脈損傷の危険もなく非常にメリットの大きな手技であるが,一方で所要時間や消化管を腹腔内で開放することによる汚染や腫瘍散布などの課題が存在する.実際,当科では腹腔鏡時代より体腔内吻合を導入していたが術後の感染性合併症を何度となく経験した.そこで我々はロボット支援下手術において体腔内吻合を施行するに際し,Vesselsealerを用いた腸間膜処理や手技の定型化を行うことによる時間短縮だけでなく,次のような感染対策を講じてきた.①化学的前処置②腸管内容停滞を回避するための手術2日前の機械的前処置③器械挿入孔閉鎖時の吊り上げ支持糸の利用④閉腹前の腹腔内大量洗浄⑤閉創前の十分な創洗浄.これらにより満足できる短期成績が得られているが,今回はその詳細について検討する.
 【対象】
 2022年8月から2024年4月までに右側結腸癌に対して体腔内吻合を伴うロボット支援下手術を施行した33例を後ろ向きに検討した(当科では機械的前処置が可能な症例に対しては進行度に関わらず全例体腔内吻合を実施した).抗生剤は原則術中のみの投与とした.
 【結果】
 男女比は17:16で年齢の中央値は74(42-91)歳であった.腫瘍の局在は盲腸11例,上行結腸17例,横行結腸5例で,18例に回盲部切除術,15例に右半結腸切除術を施行した.再建はoverlap法が28例と最多で(器械挿入孔の閉鎖は92.9%が手縫い2層縫合),機能的端々吻合が5例であった.最近では助手を利用したハイブリッド手術を10例に施行していた.手術時間の中央値はそれぞれ232(127-480)分であった.出血量の中央値は1(0-350)mlで術後在院日数の中央値は8(6-16)日であった.感染性合併症に関しては,縫合不全は認めず,乳びに対する長期ドレーン留置による逆行性感染を1例(3.0%),創感染を1例(3.0%)に認めるのみであった.
 【結語】
 様々な感染予防策を講じることにより感染性合併症の頻度を減少させることに成功し,手技を定型化することによる時間短縮の効果も経験を重ねるたびに実感できている.今後は腹膜播種再発率などの腫瘍学的なアウトカムを検討していく必要があると考える.