講演情報
[P10-2-2]当院における認知症患者の直腸脱に対する治療方針について
川島 市郎, 池田 純 (京都民医連中央病院)
<はじめに>
認知症患者は高齢で排便障害があり,直腸肛門疾患がQOLを著しく低下させる.
脱肛や直腸脱を発症すると肛門部の違和感に支配され,排泄にかかる時間が増加し病状が悪化する.治療法では,排便指導の効果が期待し難く,経会陰手術後の再発が多い.当院の認知症患の直腸脱に対する治療方針を紹介する.
<対象>2021年1月から2023年12月まで認知症患者の直腸脱(5cm以上の重症例)腹腔鏡下直腸脱手術を施行した9例
<結果>平均年齢は,86才(75才~95才)性別は,全員女性.生活の場は自宅7例,施設2例.主たる介護者は息子6人,娘2人,夫1人であった.術前評価では要支援3名,要介護1が2名,要介護2が1名,要介護3が2名,要介護4が1名であった.直腸脱が原因と思われる貧血(Hb<9.0g/dl)は1例,全員が低栄養(alb<3.8g/dl)であった.手術時間の平均は102分(63分~135分)出血量の平均は22ml(中間値2ml)であった.Clavien-Dindo分類2が1例(肺炎),せん妄は8例(89%)に認められた.術後平均在院日数は9日(3日~17日)であった.退院後,患者家族が実感できる本人の満足感がえられ,明らかにQOLが改善され再発はみとめられていない.
<考察>当院では認知症患者の直腸脱に対して,軽症例以外は,腹腔鏡下直腸脱手術を基本術式にしている.術中判断でThirsh法を併用する場合がある.術前には,直腸癌の有無をチェックしている.術後翌日からリハビリテーションを開始し,認知症ケアチームが介入し,術後せん妄予防に務めている.高齢者の場合,低活動せん妄も多く,家族の協力も得て,早期発見に務めている.幸い,転倒骨折やせん妄遷延に伴う入院期間の延長は見られなかった.
当院では退院の必要条件として排便コントロールを重要視している.術後,一時的に便秘が悪化する症例が見られ,術前から便失禁のハイリスク群であるため内服薬の調整に苦慮する症例があった.
<結語>認知症患者の直腸脱に対して,腹腔鏡下直腸脱手術は安全な治療であり,術後のQOLも高い.術後はせん妄予防策,排便コントロールが課題である.
認知症患者は高齢で排便障害があり,直腸肛門疾患がQOLを著しく低下させる.
脱肛や直腸脱を発症すると肛門部の違和感に支配され,排泄にかかる時間が増加し病状が悪化する.治療法では,排便指導の効果が期待し難く,経会陰手術後の再発が多い.当院の認知症患の直腸脱に対する治療方針を紹介する.
<対象>2021年1月から2023年12月まで認知症患者の直腸脱(5cm以上の重症例)腹腔鏡下直腸脱手術を施行した9例
<結果>平均年齢は,86才(75才~95才)性別は,全員女性.生活の場は自宅7例,施設2例.主たる介護者は息子6人,娘2人,夫1人であった.術前評価では要支援3名,要介護1が2名,要介護2が1名,要介護3が2名,要介護4が1名であった.直腸脱が原因と思われる貧血(Hb<9.0g/dl)は1例,全員が低栄養(alb<3.8g/dl)であった.手術時間の平均は102分(63分~135分)出血量の平均は22ml(中間値2ml)であった.Clavien-Dindo分類2が1例(肺炎),せん妄は8例(89%)に認められた.術後平均在院日数は9日(3日~17日)であった.退院後,患者家族が実感できる本人の満足感がえられ,明らかにQOLが改善され再発はみとめられていない.
<考察>当院では認知症患者の直腸脱に対して,軽症例以外は,腹腔鏡下直腸脱手術を基本術式にしている.術中判断でThirsh法を併用する場合がある.術前には,直腸癌の有無をチェックしている.術後翌日からリハビリテーションを開始し,認知症ケアチームが介入し,術後せん妄予防に務めている.高齢者の場合,低活動せん妄も多く,家族の協力も得て,早期発見に務めている.幸い,転倒骨折やせん妄遷延に伴う入院期間の延長は見られなかった.
当院では退院の必要条件として排便コントロールを重要視している.術後,一時的に便秘が悪化する症例が見られ,術前から便失禁のハイリスク群であるため内服薬の調整に苦慮する症例があった.
<結語>認知症患者の直腸脱に対して,腹腔鏡下直腸脱手術は安全な治療であり,術後のQOLも高い.術後はせん妄予防策,排便コントロールが課題である.