講演情報
[P15-1-2]上行結腸軸捻転症に対する結腸右半切除術後に悪性症候群を発症した1例
安田 幸嗣1, 孫 敏莉1, 福島 崇仁1, 近藤 理江1, 松永 圭吾1, 小川 雅子1, 朴 成進1, 西川 武司1, 松田 圭二1, 前田 守1, 増田 渉2 (1.同愛記念病院外科, 2.同愛記念病院病理検査科)
症例は50歳台,女性.2024年1月上腹部痛を主訴に当院に搬送された.来院時,意識明瞭で,体温38.7度,血圧127/75mmHg,脈拍88回/分であった.身体所見上は腹部膨満があり,上腹部に圧痛,反跳痛を認めた.血液検査上,白血球数,CRP値の上昇を認め,腹部単純CT検査にて,上行結腸捻転症による絞扼性腸閉塞の診断が得られた.同日,緊急手術にて開腹結腸右半切除術を施行した(手術時間1時間15分,出血量175ml).術後2日目の朝より,38度台の発熱,意識変容,発汗著明,全身硬直,体動時振戦が出現,その際のドレーン所見にて,血性腹水が認められたため,術後の後出血を疑い,開腹止血術を施行した.術中所見では,大網に微小出血部を認め,縫合止血術を施行した(手術時間:58分,出血量50ml).再手術後も38度台の発熱,意識変容,両足尖足位,頸部および四肢の筋強剛,両下肢クローヌス,発汗,頻脈を認めた為,臨床経過より悪性症候群を考えた.自律神経症状に対して,ロラゼパム 6mg/日の胃管投与を開始し,投与2日後より体温下降と頻脈の改善,投与5日後より意識状態の改善,また嚥下能の改善が認められた.全身管理の継続と同治療を経口摂取にて継続することで,食事摂取再開,立位,歩行リハビリも可能となり,その後,リハビリ治療を継続し,最終的には自力歩行できる状態で退院となった.今回,上行結腸軸捻転症に対する緊急手術後に悪性症候群を発症し,救命し得た症例を経験した為,文献的考察を含めて報告する.