講演情報
[PD1-3]下部直腸癌に対するTaTME術後排便機能の吻合法別検討:手縫い吻合とSST吻合
佐々木 将磨, 北口 大地, 長谷川 寛, 池田 公治, 塚田 祐一郎, 西澤 祐吏, 伊藤 雅昭 (国立がん研究センター東病院)
【背景】TaTMEに特徴的な吻合方法であるsingle stapling technique(SST)は,従来手縫い吻合を行っていた吻合線が肛門管上縁ないし肛門管内に位置する結腸肛門吻合においても安全に実施可能な吻合方法である.しかし,この方法が術後の肛門機能に及ぼす影響はまだ十分に解明されていない.
【目的】下部直腸癌に対するTaTME術後の短期治療成績および排便機能をSST吻合と手縫い吻合で比較検討する.
【方法】本検討は単施設,後ろ向きコホート研究である.2018年1月から2020年3月の間に,腫瘍下縁が肛門縁より6cm以内にある下部直腸癌に対して吻合を伴うTaTMEが施行された症例を対象とし,SST群と手縫い群に群別した.術後短期成績としてClavien-Dindo分類gradeII以上の吻合関連合併症(縫合不全,骨盤内膿瘍,吻合部出血,吻合部狭窄)の発生頻度を比較した.術後排便機能としてLARS(low anterior resection syndrome)scoreおよびWexner score(WS)を算出し,LARS score 30点以上をmajor LARS,WS 16点以上をsevere incontinenceと定義した.
【結果】対象症例は87名であり,手縫い群48名,SST群39名であった.手縫い群では7例(15%)に縫合不全を認めたが,SST群では縫合不全例を認めなかった.他の吻合関連合併症の発生頻度については両群間で有意差は認めなかった.手縫い群におけるmajor LARSの割合は,SST群よりも有意に高かった(79% vs. 56%;P=0.035).severe incontinenceの割合は手縫い群でわずかに高かったが,有意差は検出されなかった(19% vs. 10%;P=0.368).
Major LARS発生のリスク因子検討のため単変量解析を行った結果,手縫い吻合はSST吻合に比べて統計学的有意なリスク因子として挙げられた(odds ratio(OR)2.90,95%CI 1.04-8.46;P=0.0352).多変量解析においては,吻合高,縫合不全,術前CRTを説明変数とした結果,手縫い吻合は有意なリスク因子であることが示された(OR 2.99,95%CI 1.05-8.55;P=0.0407).
【結論】下部直腸癌に対するTaTMEにおけるSST吻合は,術後短期成績を悪化させることなく,手縫い吻合と比較して術後排便機能障害への関与が少ない可能性がある.
【目的】下部直腸癌に対するTaTME術後の短期治療成績および排便機能をSST吻合と手縫い吻合で比較検討する.
【方法】本検討は単施設,後ろ向きコホート研究である.2018年1月から2020年3月の間に,腫瘍下縁が肛門縁より6cm以内にある下部直腸癌に対して吻合を伴うTaTMEが施行された症例を対象とし,SST群と手縫い群に群別した.術後短期成績としてClavien-Dindo分類gradeII以上の吻合関連合併症(縫合不全,骨盤内膿瘍,吻合部出血,吻合部狭窄)の発生頻度を比較した.術後排便機能としてLARS(low anterior resection syndrome)scoreおよびWexner score(WS)を算出し,LARS score 30点以上をmajor LARS,WS 16点以上をsevere incontinenceと定義した.
【結果】対象症例は87名であり,手縫い群48名,SST群39名であった.手縫い群では7例(15%)に縫合不全を認めたが,SST群では縫合不全例を認めなかった.他の吻合関連合併症の発生頻度については両群間で有意差は認めなかった.手縫い群におけるmajor LARSの割合は,SST群よりも有意に高かった(79% vs. 56%;P=0.035).severe incontinenceの割合は手縫い群でわずかに高かったが,有意差は検出されなかった(19% vs. 10%;P=0.368).
Major LARS発生のリスク因子検討のため単変量解析を行った結果,手縫い吻合はSST吻合に比べて統計学的有意なリスク因子として挙げられた(odds ratio(OR)2.90,95%CI 1.04-8.46;P=0.0352).多変量解析においては,吻合高,縫合不全,術前CRTを説明変数とした結果,手縫い吻合は有意なリスク因子であることが示された(OR 2.99,95%CI 1.05-8.55;P=0.0407).
【結論】下部直腸癌に対するTaTMEにおけるSST吻合は,術後短期成績を悪化させることなく,手縫い吻合と比較して術後排便機能障害への関与が少ない可能性がある.