講演情報

[P11-2-5]1年かけて複数回のドレナージにより根治を得た広汎な臀部膿皮症の一例

佐々木 駿, 指山 浩志, 黒崎 剛志, 城後 友望子, 鈴木 綾, 高野 竜太郎, 川村 敦子, 中山 洋, 安田 卓, 赤木 一成, 小池 淳一, 堤 修, 浜畑 幸弘 (辻仲病院柏の葉)
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【はじめに】臀部膿皮症は肛門周囲の汗腺に感染が起こることで発症し,若年男性に有意に多く,痔瘻の合併も問題となる.治療に関しては膿皮切除とドレナージが必要であるが,局所的治療を行う以外にも広汎切除し植皮を行うなど形成外科的な手技が行われている報告も多い.広範な難治性臀部膿皮症に対して,約1年かけて複数回の局所的な膿皮切除とドレナージにより治癒を得た症例を経験したので報告する.
 【症例】38歳男性,10年前に痔瘻に対して手術歴あり,臀部からの排膿が度々あるも様子を見ていた.臀部の広汎に渡る疼痛と発熱を主訴に当院を受診した.理学所見では臀部左右に広汎な膿瘍形成を認めた.痔瘻再発も考え肛門エコーと肛門部MRI検査を行ったが,明らかな瘻管は認めず膿皮症と考えられた.血液検査ではWBC 20000/μLと高度な炎症反応上昇と,Alb 3.4 g/dLの低タンパク血症を認めた.初診より18日後に腰椎麻酔下で膿皮切除と排膿ドレナージを施行した.臀部に計7ヶ所の膿瘍腔を認め,局所的に膿皮切除行い膿瘍を掻爬した.初回術後19日で左右臀部の創近傍に新規膿瘍腔を認め,再度膿皮切除と膿瘍掻爬とloose setonを用いたドレナージを行った.さらに初回手術より46日後に左臀部にドレナージ不良な膿瘍腔を認め再度同様に膿皮切除とドレナージを追加した.初回手術後130日に左臀部のseton部周囲の膿皮切除,右臀部にも複数の膿瘍腔再燃認めloose setonを追加してドレナージした.初回手術後168日と初回手術後288日にも排膿のある膿皮に対して切除を行った.創部処置に関しては一貫してアズノール軟膏による処置を行った.5回に渡る膿皮切除とドレナージ後,初回手術より373日後に臀部の排膿はなくなり創部も上皮化が得られ外来フォローは終了となった.
 【結語】広範な膿皮切除と形成外科的な植皮治療に比べて時間はかかるが,適切なドレナージを繰り返し侵襲少なく治療ができる可能性がある.若干の文献的考察を含めて広汎な臀部膿皮症に対する治療を報告する.