講演情報
[P20-1-7]腹腔内血腫による圧排が原因で発症した人工肛門閉鎖後の縫合不全に対して,狭窄部の透視下バルーン拡張により速やかに縫合不全部の閉鎖が得られた一例
鎌田 哲平1, 大平 寛典1, 會田 貴志1, 山岸 大祐1, 高橋 潤次1, 鈴木 範彦1, 畑 太悟1, 吉田 昌1, 山内 栄五郎2, 衛藤 謙3, 鈴木 裕1 (1.国際医療福祉大学病院外科, 2.国際医療福祉大学病院放射線科, 3.東京慈恵会医科大学外科)
背景
一時的回腸人工肛門閉鎖後の縫合不全は重篤な合併症である.我々は,腹腔内血腫による圧排が原因で発症した人工肛門閉鎖後の縫合不全に対して,狭窄部の透視下バルーン拡張により速やかに縫合不全部の閉鎖が得られた症例を経験した.
症例報告
患者は44歳男性.糞尿を主訴に紹介となった.精査にてS状結腸膀胱瘻の診断で腹腔鏡下手術の方針とした.術式は腹腔鏡下高位前方切除,小腸部分切除,膀胱部分切除,covering ileostomy造設.術後経過は良好で,初回手術から1カ月後に回腸人工肛門閉鎖施行した.手術翌日から出血性ショックをきたし,術後出血と診断した.保存加療にて止血は得られたものの高度の腹部膨満,炎症反応高値が持続した.左右下腹部からの経皮的穿刺にて多量のold bloodをドレナージした.術後14日目にストーマ閉鎖部の回腸-回腸吻合部の遅発性縫合不全を発症した.腹膜炎所見は認めずドレナージは良好であったが,術後14日目からドレーン排液は100ml~200ml程度が持続し,排液の減少は認めなかった.2度の手術歴に加え,術後出血,縫合不全の影響で高度の腹腔内癒着が予想され,再手術はハイリスクと判断した.造影CT精査にて左小腸間膜間に器質化した血腫が残存し,残存血腫近傍において吻合部肛門側小腸が圧排される所見を認めた.縫合不全の原因として残存血腫による吻合部肛門側小腸の圧排を考慮し,術後24日目にドレーンからの透視下処置により狭窄部のバルーン拡張を施行する方針とした.右下腹部ドレーンから造影し縫合不全瘻孔部にSheath introducerを留置.Radifocus,microcatheter併用操作にて回腸末端まで到達し,Selecon MP catheterIIを使用しバルーンが通過不良となる回腸の血腫圧排による狭窄部を同定した.回腸狭窄部に対してCRE PRO GI wireguided balloonを使用し4.5atm-16.5mmで3分間バルーン拡張を施行した.バルーン拡張翌日からドレーン排液は著明に減少し,排便排ガスが肛門から良好となった.バルーン拡張から1週間でドレーン排液はほぼ0となり,縫合不全の治癒が得られた.経口摂取は良好で,排便排ガスも良好であり術後45日目に自宅退院となった.以後再狭窄や縫合不全の再燃は認めていない.
一時的回腸人工肛門閉鎖後の縫合不全は重篤な合併症である.我々は,腹腔内血腫による圧排が原因で発症した人工肛門閉鎖後の縫合不全に対して,狭窄部の透視下バルーン拡張により速やかに縫合不全部の閉鎖が得られた症例を経験した.
症例報告
患者は44歳男性.糞尿を主訴に紹介となった.精査にてS状結腸膀胱瘻の診断で腹腔鏡下手術の方針とした.術式は腹腔鏡下高位前方切除,小腸部分切除,膀胱部分切除,covering ileostomy造設.術後経過は良好で,初回手術から1カ月後に回腸人工肛門閉鎖施行した.手術翌日から出血性ショックをきたし,術後出血と診断した.保存加療にて止血は得られたものの高度の腹部膨満,炎症反応高値が持続した.左右下腹部からの経皮的穿刺にて多量のold bloodをドレナージした.術後14日目にストーマ閉鎖部の回腸-回腸吻合部の遅発性縫合不全を発症した.腹膜炎所見は認めずドレナージは良好であったが,術後14日目からドレーン排液は100ml~200ml程度が持続し,排液の減少は認めなかった.2度の手術歴に加え,術後出血,縫合不全の影響で高度の腹腔内癒着が予想され,再手術はハイリスクと判断した.造影CT精査にて左小腸間膜間に器質化した血腫が残存し,残存血腫近傍において吻合部肛門側小腸が圧排される所見を認めた.縫合不全の原因として残存血腫による吻合部肛門側小腸の圧排を考慮し,術後24日目にドレーンからの透視下処置により狭窄部のバルーン拡張を施行する方針とした.右下腹部ドレーンから造影し縫合不全瘻孔部にSheath introducerを留置.Radifocus,microcatheter併用操作にて回腸末端まで到達し,Selecon MP catheterIIを使用しバルーンが通過不良となる回腸の血腫圧排による狭窄部を同定した.回腸狭窄部に対してCRE PRO GI wireguided balloonを使用し4.5atm-16.5mmで3分間バルーン拡張を施行した.バルーン拡張翌日からドレーン排液は著明に減少し,排便排ガスが肛門から良好となった.バルーン拡張から1週間でドレーン排液はほぼ0となり,縫合不全の治癒が得られた.経口摂取は良好で,排便排ガスも良好であり術後45日目に自宅退院となった.以後再狭窄や縫合不全の再燃は認めていない.