講演情報

[R16-5]直腸脱に直腸瘤を合併した症例に対するメッシュを使用しない手術法

田畑 敏, 川原 洋平, 吉田 貢一 (市立砺波総合病院大腸・肛門外科)
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直腸脱に直腸瘤を合併した症例に対する手術治療法として,2014年まではAltemeier法,Delorme+TVM法,suture rectopexy+TVM法などを行ってきた.しかし,諸事情により2015年以降TVM法を当院では行わないこととしたため,現在では,Delorme法,Altemeier法,suture rectopexy法で対応している.
 Delorme法は,粘膜環状剥離後に直腸固有筋層を内反するため,直腸瘤は改善する.直腸瘤の手術法としてTAD(transanal anterior Delorme)法を行うという報告もある.しかし,脱出長が5cmを超える症例では直腸脱の再発率が高くなる.
 Altemeier法は,直腸S状結腸を切除し,通常後方挙筋形成術を併施するが,直腸瘤症例には,後方のみならず前方挙筋形成も行うようにしている.しかし,Delorme法同様再発率が高い術式である.
 suture rectopexy法を行う場合は,直腸瘤の前方突出が2cm以下のsmall gradeの場合はrectopexy法のみとするが,直腸瘤の前方突出が2cm超のmoderate gradeや4cm超のlarge gradeの場合は,rectopexy時の腹膜lapping縫合による新ダグラス窩形成前に,直腸最下端部前壁の漿膜筋層を縦方向に3-4針縫縮するようにしている.リスクの少ない腸管外壁の縫縮を追加することで術後の線維化により直腸瘤は改善すると推察し始めたもので,手技も簡便である.実際に,術後に直腸指診やdefecographyを行ってみると,直腸最下端部前壁の漿膜筋層を縦縫縮した症例の直腸瘤は,術後明らかに改善していることがわかってきた.suture rectopexyにTADを追施する方法も考慮したが,手技が煩雑となる.
 また,LVRやTVMのようなmeshを使用した術式では,術後直腸瘤は改善すると考えられるが,下部直腸前壁の伸縮・可動不良となるための違和感やsexial activity低下の問題が懸念される.後に結腸直腸癌を合併した場合にmeshによる高度癒着が手術治療の弊害になる可能性もある.
 従って,直腸脱に直腸瘤を合併した症例に対する手術治療として,上述の三法から術式選択することを推奨したい.特に,suture rectopexyに直腸最下端部前壁の漿膜筋層の縦縫縮を追加する方法は,簡便で安全かつ有用と考えている.
 同術式など手術前と手術後のdefecographyを供覧したい.