講演情報
[VPD2-4]一時的回腸人工肛門造設の癒着防止材使用に伴う人工肛門閉鎖時の癒着軽減効果に対する多施設ランダム化比較試験ADOBARRIER study
太田 絵美1, 渡邉 純2, 諏訪 宏和1, 諏訪 雄亮3, 中川 和也4, 小澤 真由美4, 沼田 正勝3, 石部 敦士4, 國崎 主税3, 遠藤 格4 (1.横須賀共済病院, 2.関西医科大学下部消化管外科学講座, 3.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科, 4.横浜市立大学附属病院消化器・腫瘍外科学)
【目的】
一時的回腸人工肛門造設術は広く行われているが,閉鎖時には腹腔内の癒着により,創の延長を要する場合や,体表から腹腔内に到る途中で剥離層を見失うなどして,挙上腸管の損傷を来す可能性がある.今回我々は,一時的回腸人工肛門造設時の癒着防止材噴霧の人工肛門閉鎖における影響を検討した.
【方法】
多施設共同単盲検ランダム化比較試験(jRCTs032200155)として施行.直腸癌患者(NETを含む)で腹腔鏡下直腸切除術,一時的回腸人工肛門造設を予定している患者を対象とし,人工肛門造設時に癒着防止材(アドスプレー)を噴霧する群AD+と噴霧しない群AD-に1:1割り付けを行った.AD+群では人工肛門造設時に癒着防止材を体外へ導出する回腸漿膜,腹膜の間に全周性に噴霧した.評価項目は人工肛門閉鎖時の手術時間,出血量,回腸人工肛門閉鎖時の癒着の評価及び腸管剥離の状態とした.癒着の評価は腹腔内の癒着の有無の他に,腹壁との癒着の重症度スコア,腹腔内の癒着の範囲と評価,腸管剥離の状態について評価した.
【結果】
2020年12月から2022年12月の期間に126例が登録され,人工肛門の未閉鎖5例を除く121例(Ad+群61例,Ad-群60例)が解析対象となった.両群の患者背景として,年齢中央値(65 vs. 65.5),男女比38例(62.3%):23例(37.7%)vs. 40(66.7%):20(33.3%)であった.両群間で背景因子に差は認めなかった.
人工肛門閉鎖時の手術時間中央値(分)は58 vs. 65(p=0.040)とAd+群で有意に短かった.術中出血量中央値は両群とも0ml(p=0.398),術後合併症あり8.2% vs. 11.7%(p=0.523),術後在院日数は両群とも6日(p=0.897)でありいずれも有意差を認めなかった.腹腔内の癒着なし78.7% vs. 50.0%,腹壁との癒着の重症度(癒着なし,薄膜状/無血管性)62.4% vs. 40.0%,腹腔内の癒着の範囲の評価(癒着なし,対象個所の全面積/長の50%以下を覆う)100% vs. 90.0%,腸管剥離時に腸管損傷なし 78.7% vs. 35.0%といずれもAd+群で有意に癒着が軽減されていた(p<0.001).
【結語】
一時的人工肛門造設時に癒着防止材を噴霧することにより,人工肛門閉鎖時の手術時間短縮及び癒着を軽減し,腸管損傷を半数以下に減らすことが示された.
一時的回腸人工肛門造設術は広く行われているが,閉鎖時には腹腔内の癒着により,創の延長を要する場合や,体表から腹腔内に到る途中で剥離層を見失うなどして,挙上腸管の損傷を来す可能性がある.今回我々は,一時的回腸人工肛門造設時の癒着防止材噴霧の人工肛門閉鎖における影響を検討した.
【方法】
多施設共同単盲検ランダム化比較試験(jRCTs032200155)として施行.直腸癌患者(NETを含む)で腹腔鏡下直腸切除術,一時的回腸人工肛門造設を予定している患者を対象とし,人工肛門造設時に癒着防止材(アドスプレー)を噴霧する群AD+と噴霧しない群AD-に1:1割り付けを行った.AD+群では人工肛門造設時に癒着防止材を体外へ導出する回腸漿膜,腹膜の間に全周性に噴霧した.評価項目は人工肛門閉鎖時の手術時間,出血量,回腸人工肛門閉鎖時の癒着の評価及び腸管剥離の状態とした.癒着の評価は腹腔内の癒着の有無の他に,腹壁との癒着の重症度スコア,腹腔内の癒着の範囲と評価,腸管剥離の状態について評価した.
【結果】
2020年12月から2022年12月の期間に126例が登録され,人工肛門の未閉鎖5例を除く121例(Ad+群61例,Ad-群60例)が解析対象となった.両群の患者背景として,年齢中央値(65 vs. 65.5),男女比38例(62.3%):23例(37.7%)vs. 40(66.7%):20(33.3%)であった.両群間で背景因子に差は認めなかった.
人工肛門閉鎖時の手術時間中央値(分)は58 vs. 65(p=0.040)とAd+群で有意に短かった.術中出血量中央値は両群とも0ml(p=0.398),術後合併症あり8.2% vs. 11.7%(p=0.523),術後在院日数は両群とも6日(p=0.897)でありいずれも有意差を認めなかった.腹腔内の癒着なし78.7% vs. 50.0%,腹壁との癒着の重症度(癒着なし,薄膜状/無血管性)62.4% vs. 40.0%,腹腔内の癒着の範囲の評価(癒着なし,対象個所の全面積/長の50%以下を覆う)100% vs. 90.0%,腸管剥離時に腸管損傷なし 78.7% vs. 35.0%といずれもAd+群で有意に癒着が軽減されていた(p<0.001).
【結語】
一時的人工肛門造設時に癒着防止材を噴霧することにより,人工肛門閉鎖時の手術時間短縮及び癒着を軽減し,腸管損傷を半数以下に減らすことが示された.