講演情報
[P15-2-1]絞扼性イレウスを疑った小腸アニサキス症の一症例
大上 英夫 (富山市立富山まちなか病院)
【症例】50代女性.【既往歴】30代;顔面神経麻痺,40代;関節リウマチ.【現病歴】20XX年5月から高血圧症で当院に通院していた.20XX年3月夕方から悪心,上腹部から腹部全体の疼痛が出現し,軽快しないため翌日当院を受診した.血圧 154/87mmHg,脈拍 79/min,体温 36.9℃,腹部;平坦軟,心窩部を中心に圧痛あり.白血球 8500/μl,CRP 1.06mg/dl.腹部単純CTで小腸拡張,腹水貯留の所見を認め,絞扼性イレウスを疑い総合病院に紹介した.【経過】総合病院での造影CTでは,骨盤内小腸に限局的な炎症による通過障害が疑われたが,明らかな閉塞起点は認めなかった.病歴や画像所見からアニサキス腸炎と診断された.末梢補液,胃管管理にて腹部症状は徐々に改善し,入院6日目に自宅退院された.【考察】消化管アニサキス症は胃が最も多く,小腸アニサキス症は約2.5%と比較的稀である.小腸アニサキス症の早期診断として,発症数日前の鮮魚の摂取,画像検査でイレウス像・腹水の存在,全身状態は良好で腹部所見も軽度ある,という特徴が報告されている.治療は保存的治療が基本となるが,手術に至る例も報告されている.本症例では上記特徴を有しており,保存的加療で軽快した.詳細な病歴聴取による適切な診断が治療方針決定に重要と考えられた.