講演情報

[O7-6]腹膜翻転部以下の局所進行直腸癌に対する当院での側方リンパ節郭清の治療成績の検討

冨田 明宏, 今瀧 裕允, 柴田 淳平, 平田 明裕, 服部 正興, 青野 景也 (公立西知多総合病院)
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【目的】
 大腸癌治療ガイドライン2022年版では腫瘍下縁が腹膜翻転部以下より肛門側にあり,壁深達度がT3以深の直腸癌には側方リンパ節郭清(LLND)が推奨されている.予防的LLNDを検討したJCOG0212試験では直腸間膜切除群のみの非劣勢は証明されなかった.様々な報告があるが現時点ではLLNDを省略できる基準は明らかではない.そこで当院のLLND症例について,今後の治療方針の一助になればと検討した.
 【方法】
 2015年5月から2023年12月までに当院で腫瘍下縁が腹膜翻転部以下より肛門側にあり,壁深達度cT2以深で,遠隔転移を認めない直腸癌に対してLLNDが施行された17例について短期成績,長期成績について後方視的に検討した.
 【結果】
 17例の全てで腹腔鏡手術が選択されていた.術前に減圧されたのは1例のみで横行結腸で双孔式ストマ造設が行われていた.術前化学療法は3例(17.6%)に施行されていた.術式は低位前方切除術が3例(17.6%),直腸切断術が14例(82.4%)であった.当院では7mm以上のリンパ節を転移陽性と判断しており,術前陽性と判断されたのは7例で,実際陽性であったのは4例であった.手術時間の中央値が523分(340-701),出血量の中央値は200ml(25-826),術中輸血は2例(11.8%),術中合併症は小腸損傷(手術翌日にわかり再手術)が1例,会陰操作時の皮膚損傷が1例であった.術後合併症はClavien-Dindo classificationIII以上が2例で上記の再手術症例と骨盤死腔炎へのドレーン留置であった.術後在院日数の中央値は18日(12-32)であった.再発例は4例(23.5%)でその内2例が局所再発,1例が鼠経リンパ節再発,1例が肝転移であった.側方リンパ節陽性例では4例中1例(25%)のみ再発をしていた.全体の術後5年生存率は73.5%,術後5年無再発生存率は72.7%であった.
 【考察】
 局所進行直腸癌に対してのLLNDの実施において当院の短期成績からは比較的安全に実施できていると考えられる.長期予後に関しては症例数が少ないため言及はできないが,今回の結果からは予防的LLND,治療的LLNDともに許容される範囲と考えられた.術前治療も含めて今後も症例を重ねてLLNDを施行する方針で検討してよいと考えられた.