講演情報

[P6-1-5]Persistent Descending Mesocolonを伴ったS状結腸癌に対して腹腔鏡下切除術を施行した1例

岡本 三智夫, 長山 聡, 角田 海斗, 植田 圭祐, 島田 明, 藤岡 祥恵, 橋本 恭一, 野村 勇貴, 竹内 豪, 武内 悠馬, 日並 淳介, 久保田 良浩 (医療法人徳洲会宇治徳洲会病院)
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【はじめに】
 Persistent Descending Mesocolon(PDM)は,発生の過程における左側結腸間膜の癒合不全により下行結腸とS状結腸が右側へ偏移し,小腸間膜や右側骨盤壁と癒着したり下腸間膜動脈(IMA)が放射状に分岐する特徴を持つ.PDMを伴ったS状結腸癌に対して腹腔鏡下切除術を施行した1例を経験したので報告する.
 【症例】
 患者は64歳の男性,腹痛と嘔吐を主訴に当院消化器内科を紹介受診された.精査の結果S状結腸癌による腸閉塞を認め内視鏡下にステントを留置され,手術目的で当科へ紹介された.術前精査のCTで下行結腸は後腹膜との癒合は見られず左腎より内側に偏移しPDMが示唆された.術中所見では下行結腸からS状結腸が内側の小腸間膜に強固に癒合しており術前の予想通りPDMと診断した.小腸間膜との癒着を剥離することでつい立て状にS状結腸間膜を展開することが可能で定型的な内側アプローチを行いIMA根部を同定しclip後切離した.左結腸動脈(LCA),下腸管膜静脈(IMV)は直視下で処理する方針とし定型的な外側アプローチと直腸間膜処理を行い直腸を自動縫合器で切離後,体外操作へ移行した.直視下で辺縁動脈の走行とLCA,IMVを確認し切除線を設定しLCAとIMVは結紮切離した.検体摘出後にDST再建し手術を終了し,術後合併症は特に認めず退院した.
 【考察】
 PDMは1.2~2.4%に認められる比較的稀な病態である.一般にPDMでは左側結腸間膜が短縮しており辺縁動脈をLCAと誤認し切離したり,辺縁動脈損傷による血流障害をきたすリスクが知られている.本症例では術前の画像検索でPDMを来している可能性が示唆されたため,術前に開腹移行の可能性も説明し手術に臨んだ.IMA以外の血管処理を体外操作で行うことにより再建腸管の血流を温存することが可能であり安全に鏡視下手術を遂行することが可能であった.