講演情報

[SY1-9]クローン病大腸癌のサーベイランスとしての肛門管生検

東 大二郎, 山門 仁, 濵畑 圭佑, 林 貴臣, 髙橋 宏幸, 和田 英雄, 小島 大望, 宮坂 義浩, 渡部 雅人 (福岡大学筑紫病院外科)
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【目的】本邦においてクローン病(以下CD)に合併した大腸癌の特徴のひとつは直腸および肛門部に好発することである.当科ではCD大腸癌サーベイランスとして肛門管生検を行っており,2018年に1985年-2018年の結果を論文報告した.今回その報告に2019年以降の結果を加え,肛門生検の癌サーベイランスとしての意義を検討した.【方法】2018年までの症例で,10年以上のCD罹病期間を有する116症例(延べ287回)を対象とした.また2019年以降の症例においては,罹患年数の条件を外して行った生検210回を対象にして,癌が検出された症例について検討した.【結果と考察】2018年までの結果では,116例中異型細胞を含めた腫瘍性病変の検出は22例(19.0%)に検出され,うち癌が18例,異型細胞4例であった.癌症例の臨床病理学的特徴としては,若年で発癌し,CD発症からの病悩期間は長期にわたっており,腫瘍の肉眼型は3・4・5型が多く,組織学的所見としては低分化腺癌や粘液癌が高頻度にみられた.18例の癌症例を,癌症状の有無でA,Bの2群に分けて比較検討すると,症状がなく発見できたA群5例では症状で発見されたB群と比べ早い段階での診断となっており予後は良好であった.全症例116例のうち癌の症状によって診断された13例を除く103例をサーベイランス症例として検討を行ったところ,癌・異型細胞の検出率は5.8%(6例)であった.さらに,経肛門的生検後のフォローアップ目的の下部内視鏡検査で癌を診断した3例を加えると,癌・異型細胞の検出率は8.7%であった.2019年1月~2024年3月までの210回の生検結果では4例の癌症例を認めた.いずれもCD罹患年数は20年以上であった.2例は痔瘻を伴っていたが,2例は明らかな肛門病変はなく,その主訴は狭窄,肛門痛であった.【結語】CD下部直腸肛門生検は,CD大腸癌サーベイランスとして有用と考えられる.