講演情報

[P11-2-4]大腸全摘30年後に回腸嚢肛門吻合部痔瘻によりフルニエ壊疽に至った一例

中村 雄悟, 江坂 和大, 寺本 仁 (市立四日市病院)
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【緒言】フルニエ壊疽は外陰部を中心に発症し,急速に進行する壊死性筋膜炎と定義される.早期の診断を行い,外科的デブリードマン,適切な抗菌薬の投与をはじめとした全身の集学的管理を必要とする,生命予後の不良な疾患である.今回我々は手術後,吻合部痔瘻によりフルニエ壊疽に至った一例を経験したため報告する.
 【症例】58歳,男性.約30年前に家族性大腸腺腫症にて大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術を施行され,その後当院でフォローされていた.20XX年小腸拡張所見増悪により排便困難と経口摂取不良のため手術目的に当科紹介となった.画像所見では小腸拡張のほか,吻合部周囲に瘻孔を疑う所見を認めた.下部内視鏡検査を施行すると6時方向,3時方向に瘻孔を認め吻合部痔瘻と診断した.痔瘻に対するドレナージを施行し,その後待機的に痔瘻根治術と小腸ストマ増設術を予定していたが,入院中に敗血症性ショックとなった.画像所見で会陰部を中心に下腹部から背部にかけて広範囲の皮下気腫と臀部に膿瘍所見を認め,吻合部痔瘻によるフルニエ壊疽と診断した.同日広範囲皮膚切開,膿瘍ドレナージ,デブリードマンを施行した.術後全身状態の改善が得られたところで小腸ストマ増設術を施行.連日洗浄処置,適宜デブリードマンを行い,植皮術も施行し発症138日後に退院となった.現在も当院通院中である.
 【考察】フルニエ壊疽の原因としては肛門周囲,下部尿路,外性器の感染巣が挙げられることが多いが,自験例のように術後吻合部にできた痔瘻が原因でフルニエ壊疽を発症したという報告は認めなかった.吻合部痔瘻が疑われた場合は,可能な限り早期に痔瘻に対する外科的治療を考慮すべきだと考えられる.今回院内発症のフルニエ壊疽に対して集学的治療を施行し良好な経過となったため,文献的考察を加えて報告する.