講演情報

[P16-1-4]大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対して蛍光尿管カテーテルを用いて安全に腹腔鏡手術を施行し得た1例

三浦 竣助, 青柳 康子, 増田 大機, 新井 聡大, 朝田 泰地, 鵜梶 真衣, 立山 幸樹, 金田 亮, 西山 優, 山口 和哉, 菅原 俊喬, 長野 裕人, 入江 工, 井ノ口 幹人 (武蔵野赤十字病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言】大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対する手術加療は,従来開腹で施行されていたが,近年腹腔鏡での手術も報告されている.しかし,炎症による癒着・組織の繊維化により,解剖の誤認リスクが高く,特に尿管損傷には注意が必要である.近年,近赤外光照射により蛍光を発するNIRC™蛍光尿管カテーテルを用いた蛍光尿管ナビゲーション手術が注目されている.今回,大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対して蛍光尿管カテーテルを用いて安全に腹腔鏡手術を施行し得た1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
 【症例】50歳男性.以前から断続的に下腹部痛を自覚していた.初発から1年程度経過して下腹部痛,発熱,気尿を主訴に前医を受診した.腹部CT検査でS状結腸膀胱瘻が疑われ,当科を紹介受診した.当院での精査の結果,S状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻が疑われた.初診時CRP 5.65mg/dL,白血球5900/μLと炎症反応の軽度上昇を認めたため,抗菌薬投与を先行した上で待機的手術の方針とした.
 手術は,麻酔導入後に両側尿管に蛍光尿管カテーテルを留置し,腹腔鏡下低位前方切除術,腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した.膀胱,S状結腸,回腸末端の高度な癒着と線維化を認め,通常の腹腔鏡観察では尿管の視認が困難であったが,近赤外光観察を併用することで尿管が明瞭に描出され,確実な尿管の温存が可能であった.術後経過は良好で,術後10日目に退院した.病理結果は悪性所見認めず,瘻孔形成を伴う憩室炎に矛盾しない所見であった.
 【考察】尿管損傷を避ける目的で術前に従来の尿管カテーテルを留置した場合でも,損傷する頻度が1.10-9.38%と報告されている.蛍光尿管カテーテルは従来の尿管カテーテルと比較して術中に視認しやすく,尿管損傷予防効果の向上が期待されている.本症例においても,術中に尿管の位置を把握する際に有用であった.
 【結語】大腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻に対して蛍光尿管カテーテルを用いて安全に腹腔鏡手術を施行し得た1例を経験した.