講演情報

[O5-5]頭側アプローチ先行によるロボット支援下結腸右半切除術の短期成績についての検討

岩本 哲好, 波江野 真大, 梅田 一生, 幕谷 悠介, 尾川 諒太郎, 吉岡 康多, 和田 聡朗, 大東 弘治, 所 忠男, 上田 和毅, 川村 純一郎 (近畿大学医学部外科学教室)
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【緒言】結腸右半切除術の手技は,十二指腸・膵臓・上腸間膜動静脈など重要臓器が3次元的に隣接する複雑な解剖学的特性と多彩な血管分岐のvariationを有するsurgical trunkの郭清が必要であることから難易度が高い.特にGCT周囲の剥離において,従来の腹腔鏡手術(CLS)で一般的な尾側からのアプローチでは切除する結腸間膜と温存する胃間膜の血管が同じ面に乗るためその区別が難しい場合がある.一方で頭側アプローチはGCTの分岐形態の把握が容易であるという利点があるが,CLSでは直線的な鉗子と頭側からの剥離操作の軸が合わないことが問題であった.しかしロボット支援手術(RAS)は関節のある鉗子により手術操作の自由度が高いため,頭側から尾側に向けた剥離操作も無理なく可能であり,頭側アプローチの利点をより生かすことができる.
【目的】頭側アプローチによるロボット支援下結腸右半切除術の有用性について検討する.
【方法】2022年1月から2024年4月の間に当院で結腸癌に対して結腸右半切除を施行した110例をRAS群とCLS群に分類し,その短期成績を比較検討した.
【結果】症例数はRAS群15例,CLS群95例.(以下RAS,CLSの順で記載)年齢:77歳vs 76歳(p=0.8105),男/女:5/10 vs 46/49(p=0.4044),BMI:21.6 vs 21.2(p=0.3933),ASA-PS(1/2/3):5/8/2 vs 9/54/32(p=0.0228),腫瘍長径(mm):40 vs 40(p=0.8512),腫瘍占拠部位(C/A/肝彎曲/T):3/7/3/2 vs 40/37/12/6(p=0.3610),cStage 0/I/II/III/IV:0/5/1/9/0 vs 2/32/610/41/10(p=0.5753),術式(C/Rt/exRt):5/6/4 vs 49/42/4(p=0.0070),吻合(体腔内/体腔外):11/4 vs 29/66(p=0.0014),手術時間(分):315 vs 240(p=0.0084),出血量(ml):0 vs 5(p=0.3706),術中血管損傷:0 vs 6(p=0.2773),開腹移行:0 vs 4(p=0.4182),郭清リンパ節個数:21 vs 22(p=0.9548),DM(mm):100 vs 96(p=0.2733),合併症(CD≧2):1 vs 12(p=0.5060),術後在院日数:7 vs 8(p=0.1728).
【結語】RASではCLSと比較して手術時間が有意に長いが,術中血管損傷と開腹移行,術後合併症が少なかった.右側結腸癌に対する結腸右半切除術において,手術操作の自由度が高いRASでは頭側アプローチを含めた多彩なアプローチ法に対応しやすいため,より安全で確実な郭清が可能である.