講演情報

[P20-2-2]虫垂炎術後に追加切除を行った3例;虫垂goblet cell carcinoid(GCC)2例と虫垂NET1例

久野 晃路, 薬師川 高明, 中能 玲央, 大下 恵樹, 山本 健人, 仲野 健三, 河合 隆之, 奥知 慶久, 井口 公太, 田中 英治, 福田 明輝, 田浦 康二朗, 寺嶋 宏明 (公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院消化器外科)
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【背景】虫垂goblet cell carcinoid(GCC)と虫垂NETは稀な病態で,虫垂炎を契機に診断されることが多い.虫垂切除後における虫垂GCC/NETの治療方針はcontroversialである.虫垂炎術後,虫垂GCC2例・虫垂NET1例に対し追加切除を実施したので報告する.
【症例1】49歳,男性.急性虫垂炎に対し緊急腹腔鏡下虫垂切除術を施行.病理所見は虫垂GCCであり,断端は陰性であった.追加切除目的に腹腔鏡下回盲部切除術D3郭清を施行.病理所見には遺残腫瘍なくリンパ節転移を認めなかった.
【症例2】41歳,男性.1週間前からの右下腹部痛で受診.穿孔性虫垂炎(複雑性虫垂炎)と診断,保存加療後に待機手術施行の方針とした.初診時より約2ヵ月後に待機的腹腔鏡下虫垂切除術を施行.病理所見は虫垂GCCであった.断端は陰性であったが,T3相当であり更に約1ヵ月後追加切除目的に腹腔鏡下回盲部切除術D3郭清を施行.術中播種病変は認めず,病理所見には遺残腫瘍なくリンパ節転移を認めなかった.
【症例3】48歳,男性.急性虫垂炎に対し緊急腹腔鏡下虫垂切除術を施行.病理所見は虫垂NET G1であり,断端陽性の可能性が指摘された.追加切除目的に腹腔鏡下回盲部切除術D3郭清を施行した.病理所見には遺残腫瘍なくリンパ節転移を認めなかった.
【考察】虫垂GCCは悪性度が高くリンパ節転移をきたす頻度も高いため,追加切除基準はないものの,症例1・症例2において経過観察とするにはリスクが高いと考察.追加切除適応と判断し,腹腔鏡下回盲部切除術を追加で実施した.症例2は初診時穿孔性虫垂炎の診断であったが術中播種病変は認めず.穿孔性虫垂炎既往があったことより術後化学療法(XELOX)実施とした.
虫垂NETに関し追加切除適応はcontroversialであるが,症例3は初回手術後病理所見で断端陽性の可能性も指摘されたため,腹腔鏡下回盲部切除術を追加で実施した.
虫垂炎術後に診断された虫垂GCC/NETに関して経過観察とした報告も散見され,患者への綿密なinformed consentのもと治療方針を決定する必要がある.
【結語】虫垂炎術後の病理所見より追加切除を実施した3例を経験した.更なる症例の集積により,長期成績に関する詳細な検討を行うことが望まれる.