講演情報

[P11-2-3]当科におけるフルニエ壊疽3症例の治療経験

坂本 譲, 石川 昂弥, 正司 裕隆, 樋口 椋介, 中本 裕紀, 大島 隆宏 (市立稚内病院外科)
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【はじめに】フルニエ壊疽は外陰部を中心とした急性壊死性筋膜炎であり,早期診断,外科的デブリードマン,適切な抗菌薬投与など,集学的治療を要する疾患である.今回,早期治療介入により良好な経過を得たフルニエ壊疽3症例を経験したので報告する.
 【症例】症例1は86歳男性,発熱・会陰部痛を主訴に前医受診,フルニエ壊疽疑いで当科へ搬送となった.会陰部から臀部のフルニエ壊疽に対し,同日腹腔鏡下S状結腸ストマ造設術,デブリードマンを施行した.術後形成外科転院となり皮弁再建後,当科でストマ閉鎖術を施行した.症例2は51歳男性,交通事故で下半身不随と感覚脱失の既往があり,乏尿を主訴に前医を受診した.CTで左臀部に膿瘍を認め当科へ搬送となり,左臀部フルニエ壊疽の診断で同日デブリードマンを施行し,術後形成外科へ転院し皮弁再建を施行した.症例3は72歳女性,子宮頸癌術後・放射線加療後下腿浮腫の既往があり,発熱を主訴に当院婦人科入院となった.CTで会陰部膿瘍を認め当科紹介,会陰部フルニエ壊疽の診断で同日デブリードマンを施行した.創洗浄にて創部は安定し,今後形成外科で皮弁再建の予定である.
 【考察】フルニエ壊疽は1883年にFournierにより報告され,生殖器,会陰部,肛門周囲を中心とし急速に進行する壊死性筋膜炎と定義される.男性に多く,基礎疾患は糖尿病が最多だが,肥満,免疫不全状態,また,下半身不随や感覚脱失など褥瘡感染が放置されやすい病態が発症に関与する.治療は,緊急デブリードマン,抗菌薬投与,全身管理,術後創傷管理が重要であり,便や尿による汚染を予防するため膀胱瘻や人工肛門造設が検討され,デブリードマンによる欠損部への植皮や皮弁を用いた再建も必要となる場合が多い.今回の3症例においても,全て緊急デブリードマンを施行し,広域スペクトラムの抗菌薬投与,全身治療管理にて救命し,術後創部洗浄や局所陰圧閉鎖療法を施行した後,植皮,皮弁再建にて良好な経過が得られた.
 【結語】フルニエ壊疽においては,早期の診断,緊急かつ徹底的なデブリードマンに加えて全身管理が救命に重要であり,欠損部に対しては植皮や皮弁を用いた再建が有用である.