講演情報

[PD4-5]大腸ステント留置後手術の治療成績向上におけるCovered Stentの可能性

松田 明久, 山田 岳史, 上原 圭, 進士 誠一, 横山 康行, 高橋 吾郎, 岩井 拓磨, 宮坂 俊光, 香中 伸太郎, 松井 隆典, 林 光希, 吉田 寛 (日本医科大学付属病院消化器外科)
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【背景と目的】閉塞性大腸癌に対する大腸ステント留置後手術(bridge to surgery:BTS)が広く行われるようになったが,閉塞自体が再発リスクでありさらなる治療成績の向上が望まれる.使用ステントに関しては径やaxial forceの強さが治療成績に影響することが示唆されている.近年,従来のNon-Coveredに加えてCovered Stentが使用可能となっているが,BTSにおける治療成績の報告は乏しい.
【方法と結果】本学付属3病院でBTSを施行した212例を対象とした.Non-Covered(NC-S群:198例)とCovered(C-S群:14例)に分け,ステント関連成績,術後短期成績を後方視的に比較検討した.年齢,性別,BMI,占拠部位(左右),留置から手術までの待機期間(中央値24日 vs 28日),Alb値等の背景因子に有意差を認めなかった.技術的成功率は99.0% vs 100%,臨床的成功率は92.9% vs 100%.ステント関連合併症においてNC-S群は逸脱7例,穿孔2例,出血1例,再閉塞6例認めたのに対し,C-S群は逸脱2例認めた(2例はいずれもNAC症例).術後短期成績に関して,縫合不全(6.5% vs 7.1%:1例),CD≧2の術後合併症(19.2% vs 14.3%)に有意差を認めなかった.病理学的所見において,Pnに差は認めないが,Ly,V因子はC-S群で軽度であった.血漿cfDNAにおけるLINE-1 geneのlong/short fragment ratio(LSR)はctDNAの代替として有用であるとされるが,NC-S群(33例)と(C-S群:7例)でその留置後の推移をみると,NC-S群では1,3日目に優位にLSRが上昇するが,C-S群では有意な上昇を認めなかった.
【考察と結語】大腸Covered Stentはingrowthの抑制効果が高いが,逸脱率が高いため主にStent-in-stentで用いられてきた.しかし,逸脱による臨床症状への影響は少なく,腫瘍への面で圧排がNon-Coveredに比べ増殖,転移促進を軽減させる可能性があり,BTSにおいて有用である可能性がある.