講演情報

[O16-2]当院における緊急手術時のストーマサイトマーキング施行の実状とストーマ関連合併症の検討および傍ストーマヘルニアに対する鏡視下手術の実際

斎藤 健一郎, 天谷 奨, 高嶋 吉浩, 宗本 義則 (福井県済生会病院外科)
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【緒言】管理しやすいストーマを造設する上で,造設位置は重要な因子であり,通常は術前にストーマサイトマーキングが施行されているが,緊急手術では施行が困難な場合も少なくない.当院における緊急手術時のストーマサイトマーキング施行の実情とストーマ関連合併症について報告する.また傍ストーマヘルニアに対する鏡視下手術例の動画を提示する.【対象と方法】2014年から2023年の10年間に当院で緊急手術にて人工肛門を造設した110例.術前ストーマサイトマーキングの有無,実際の造設位置,ストーマ関連合併症などを調査した.【結果】術前ストーマサイトマーキングは61例に施行されており,31例は時間外,30例は時間内のマーキングであった.マーキング位置への造設は58例で施行,3例はマーキング外の位置への造設となった.術前ストーマサイトマーキングが施行されなかった49例では32例が時間外手術,17例が時間内手術であった.手術方法は5例が腹腔鏡,105例が開腹で,開腹例のうち,3例が切開創への挙上,102例は創部より距離をおいた造設であった.ストーマ関連合併症は粘膜皮膚離開を13例,傍ストーマヘルニアを5例,ストーマ壊死を4例,ストーマ脱を1例に認めた.傍ストーマヘルニアの5例のうち2例はストーマ閉鎖術を施行した.【考察】当院には皮膚排泄ケア認定看護師が3名,ストーマ認定士が17名在籍しており,術前ストーマサイトマーキングは全例この20名が施行している.定期手術,準緊急手術では全例が施行されているが,緊急手術では時間内で47例中30例,時間外は63例中31例の施行にとどまっていた.術前ストーマサイトマーキング施行の有無はストーマ関連合併症の発生頻度とは関連を認めなかったものの,合併症には現れないパウチ漏れの頻度や自己管理のしやすさなどに差がある可能性が考えられる.また,開腹創への挙上例でもストーマ関連合併症の増加は認めなかったものの,ある程度のストーマ周囲皮膚炎は必発であり,可能であれば創部から離れた位置での造設が望ましいと考える.【結語】当院における緊急手術時のストーマサイトマーキング施行の実情を報告し,傍ストーマヘルニアに対する手術例を提示する.