講演情報

[R13-2]Stage IV大腸癌に対する原発巣切除の意義

山本 学, 安井 千晴, 石黒 諒, 柳生 拓輝, 河野 友輔, 木原 恭一, 藤原 義之 (鳥取大学医学部消化器・小児外科)
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【はじめに】
Stage IV大腸癌に対する原発巣切除に関して2022年版ガイドラインでは,無症状の場合には原発巣切除を行わずに全身化学療法を行うことが弱く推奨されている.しかし実臨床において,原発巣からの出血や閉塞,穿孔を危惧して切除を先行する症例もあるのが実情である.今回同時性転移を有する大腸癌の原発巣切除の意義を検討した.
【対象と方法】
2009年から2022年にかけて同時性遠隔転移を有するStage IV大腸癌に対して原発巣切除を行った症例について,周術期の成績および予後について検討した.また化学療法を先行した症例の詳細と予後についても検討した.
【結果】
原発巣切除を行った症例は132例で年齢中央値69歳,男性/女性は84/47例,Clavien-Dindo分類Grade III以上の合併症は16例(12.2%)に生じた.術後在院日数中央値は10日,3例(2.3%)が在院死した.術後の化学療法は88例(66.7%)に導入され,19例(14.4%)はBSCであった.手術から化学療法導入までの期間は中央値37日であった.原発巣切除を行った全症例の切除後の生存期間は中央値30.2ヵ月で,一度でもR0切除となった症例はそれ以外と比べて有意に予後良好であった(83.7ヵ月 vs 20.3ヵ月,p<0.001).原発巣切除後CD Grade III以上の合併症を起こした症例と起こしていない症例では予後に有意な差は認めなかった(25.4ヵ月 vs 30.2ヵ月,p=0.321).
ついで化学療法を先行した54症例について検討した.経過中に何らかの外科治療を施行した症例は41例(75.9%)あり,原発巣切除20例(37.0%)バイパス4例(7.4%),腫瘍穿孔を1例(1.9%),抗VEGF抗体薬の関与が否定できない穿孔を1例に認めた.最終的に人工肛門が造設された症例は24例(44.4%)であった.無症状かつ転移巣の切除困難で原発巣切除を先行した症例と,化学療法を先行した症例の予後には有意な差を認めなかった(28.5ヵ月 vs 21.0ヵ月,p=0.190).
【まとめ】
当科におけるStage IV症例の原発巣切除は安全に施行されていた.化学療法中に何らかの外科介入を要する症例も多いため,転移巣切除が困難でも,腫瘍量や全身状態を鑑みて原発巣切除の先行も念頭に治療方針を決定すべきであると考えられた.