講演情報

[P7-1-3]潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎活動性評価におけるバイオマーカーの有用性~便中バイオマーカーvs血清バイオマーカー

下山 貴寛, 山本 隆行, 西川 隆太郎, 堀 智英, 中山 茂樹, 岩永 孝雄, 梅枝 覚 (JCHO四日市羽津医療センター外科)
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【目的】潰瘍性大腸炎(UC)術後回腸嚢炎に対する活動性評価において便中バイオマーカーは有用であるが,LRGと比較検討された報告はない.今回我々は前向き研究により,UC術後回腸嚢炎の検出力を便中バイオマーカー(便中カルプロテクチン:fCAL,便中ヘモグロビン:fHb)と血性バイオマーカー(LRG,CRP)で比較検討した.【方法】潰瘍性大腸炎術後患者64人を対象とした.回腸嚢炎の診断には,PDAI(pouchitis disease activity index)スコアを用いて,臨床的,内視鏡的,組織学的評価項目の合算値7点以上を回腸嚢炎と診断した.検出精度の指標であるROC曲線下面積(AUC)を各バイオマーカー間で比較検討した.【結果】男:女=41:23,年齢(中央値)=55.5歳,術後病脳期間=159.5か月であり,回腸嚢炎と診断されたのは24人(37.5%)であった.fCAL,fHb,LRG,CRPは,いずれも回腸嚢炎を有する群において有さない群と比較し有意に上昇していた(fCAL:927 vs 76μg/g;P<0.001,fHb:181.5 vs 6.5 ng/ml;P<0.001,CRP:0.32 vs 0.075 mg/dl;P<0.001,LRG:15.8 vs 11.1 μg/ml;P=0.005).回腸嚢炎の検出精度を示す各バイオマーカーのAUC(Cut off値)はfCAL=0.95(282μg/g),fHb=0.93(33ng/ml),CRP=0.76(0.16mg/dl),LRG=0.71(15.5 μg/ml)の順に高値であった.AUCを比較するとfCALはfHbと有意差を認めなかった(P=0.32)が,CRP,LRGとの比較では有意差を認めた(CRP:P=0.004,LRG:P<0.001).fCALの回腸嚢炎を検出する精度は,感度96%,特異度90%,陽性的中率85%,陰性的中率97%であり,LRGは感度63%,特異度80%,陽性的中率65%,陰性的中率78%であった.検査を組み合わせることで検査精度を向上させるには至らなかった.【結論】回腸嚢炎の検出精度はfCALが最も優れていた.fCALは血性バイオマーカーであるCRP,LRGよりも有用な回腸嚢炎のモニタリングツールである.