講演情報

[R12-4]pT4b(前立腺)直腸癌の術前MRI所見の検討

島野 瑠美, 賀川 弘康, 塩見 明生, 眞部 祥一, 山岡 雄祐, 田中 佑典, 笠井 俊輔, 井垣 尊弘, 額田 卓, 森 千浩, 高嶋 祐助, 石黒 哲史, 坂井 義博, 谷田部 悠介, 辻尾 元, 八尾 健太, 横山 希生人 (静岡県立静岡がんセンター)
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【背景】局所進行直腸癌の前立腺近接症例では,EWが確保できれば前立腺部分切除の有効性が報告されている.一方で直腸癌のcT4b(前立腺)or cT3の評価は難しい.直腸癌のMRIはT2強調画像(T2W)での評価が基本とされるが,Gd-DTPA造影後・脂肪抑制T1強調画像(T1W-FS-3D-Gd)や拡散強調画像(DWI)の併用で診断精度は高まり,特に高b値のDWIではリンパ節診断だけでなく,腫瘍の局在の評価にも有用との報告がある.
 【目的】pT3/pT4b(前立腺)直腸癌の術前MRI所見を検証する.
 【対象と方法】2011年から2021年に前立腺局所浸潤が疑われた初発原発性直腸癌症例のうち,前立腺部分切除17例とcT4b(前立腺)骨盤内臓全摘(TPE)7例.pT<3,Stage IV,大腸多発癌の同時手術,前立腺癌合併,尿道・膀胱浸潤を伴うTPEは除外した.術後病理診断から,術前MRIの最深部所見を後方視的に検証した.MRI条件はT1W,T2W,T1W-FS-3D-Gd,DWIを評価した.pT4b(前立腺)を疑う所見として“所見①”:MRI各条件にて直腸壁と前立腺の間に境界がないこと,“所見②”:DWIにて,前立腺方向に突出する直腸壁の高信号領域を認めることとし,これらの所見の有無を評価した.主要最深部にて前立腺被膜の不整がなければ,所見①は陰性と評価した.
 【結果】患者背景は年齢中央値67.5歳,pT3:18例,pT4b(前立腺±精嚢)3例,(前立腺周囲組織)2例,(神経血管束)1例.pT4bでは所見②が全症例で陽性となり,pT4b(前立腺)ではMRIの全条件で所見①が陽性となった.pT3は全症例でMRIのいずれかの条件で所見①が陰性となり,所見②も16例で陰性となった.
 【結語】pT4b(前立腺)直腸癌の診断は,MRI全ての条件で総合的に深達度評価を行うことが有用である.DWIで前立腺方向に突出する直腸壁の高信号領域があり,いずれのMRI条件でも直腸と前立腺間の境界を認めなければpT4b(前立腺)となる.