講演情報

[R20-3]頻回に再発を繰り返し9価HPVワクチンで改善した上皮内癌合併肛門尖圭コンジローマの1例

指山 浩志, 堤 修, 赤木 一成, 小池 淳一, 安田 卓, 中山 洋, 川村 敦子, 鈴木 綾, 高野 竜太朗, 黒崎 剛史, 佐々木 駿, 浜畑 幸弘 (辻仲病院柏の葉大腸肛門外科)
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繰り返し再発をする肛門部上皮内癌合併尖圭コンジローマ症例に対し9価HPVワクチンを投与することにより良好な経過をたどった症例を報告する.
 【症例】20代男性 経過:下血を主訴に近医受診し尖圭コンジローマ(AC)の診断にて切除+焼灼術を施行した.病理検査でACに扁平上皮癌を合併していたため近燐の大学病院に紹介となった.大学病院では上皮内癌(AIS)を認めるが腫瘍の明らかな露出はないと再診断された.術後3か月で肛門管に乳頭状隆起を認め生検で肛門上皮内腫瘍(AIN)の診断となったため当院紹介となった.
 当院受診時は肛門周囲にACが多発し肛門管内の壁の硬化が認められた.初回術後4か月にAC切除焼灼と肛門管内の壁硬化部の切除を行った.術後病理検査ではACとAIS(断端陰性)であった.再手術4週後にACが多数再発し,肛門管の壁の硬化もあり再度切除焼灼,病理検査で再度AISが認められた.再手術8週後には肛門管内と肛門近傍にACの再発が見られ切除焼灼を行った.切除組織の検査ではローリスク型,ハイリスク型HPVがともに陽性であり,ハイリスク型の簡易ジェノタイプ検査はHPV51型,33/58型が陽性でありHPV関連AISと考えられた.再発が急速で手術のみではコントロールが難しいと判断し十分なインフォームドコンセントの下に再手術9週後に9価HPVワクチン投与を開始した.同時にベセルナ軟骨を開始したが皮膚炎を起こしたため中止となった.再手術13週後(ワクチン投与4週後)に肛門管内に2か所,肛門周囲に多数のACの再発を認め切除焼灼を行った.初回ワクチン投与8週後に2回目のワクチンを施行したがその際にはACの再発はなかった.
その後2回目ワクチン投与後4か月の時点でAINおよびACの再発は見られていない.
 【考察】肛門部のACと一部の肛門癌はいずれもHPV関連の疾患と考えられている.HPVワクチンはHPV関連疾患の予防に効果があるとされるが,HPV感染後の治療効果には議論がある.HPVワクチンが子宮頸部のCINの局所切除後の再発抑制に効果があるというメタアナリシスがあり,AINについても同様の効果を認める可能性はあると思われる.