講演情報
[VWS3-5]完全直腸脱に対する腹腔鏡下後方固定術(LSR)と腹腔鏡下前方固定術(LVR)の比較
藤森 正彦1, 中塚 博文2, 先本 秀人2, 小川 尚之2 (1.呉市医師会病院大腸肛門病センター大腸・肛門外科, 2.呉市医師会病院大腸肛門病センター外科)
【はじめに】当院では,完全直腸脱に対する経腹的な治療として,腹腔鏡下直腸後方固定術(LSR:Laparoscopic suture rectopexy)と腹腔鏡下直腸前方固定術(LVR:Laparoscopic ventral rectopexy)を行っている.今回これらLSR及びLVRについて報告する.
【対象】術式は,70歳未満または70歳以上でも完全直腸脱のみの場合はLSRを,70歳以上で子宮摘出後など骨盤の脆弱性が疑われる場合にはLVRを選択している.2010年6月より2023/12月までに経腹的手術を88例に対して行い,LSRは66例(75%),LVRは22例(25%)であった.
【手術方法】両術式で剥離は直腸後腔は恥骨直腸筋付近まで剥離を行っている.LVRは両側の恥骨直腸筋を露出し,前方は術中に肛門指診を行い肛門縁より約2cmまで行っている.LSRの固定はテニアを岬角の前縦靭帯に2針固定し,LVRはMeshを両側恥骨直腸筋に固定し直腸は7針,前縦靭帯に3針固定している.また完全直腸脱には約30%程度に他の臓器脱が合併することが知られており,子宮のLevel 1の補強目的でMcCallを追加している.McCallは左右の仙骨子宮靭帯と膣後壁を縫合し,LSRではその部位をMeshに固定している.
【結果】年齢の中央値79歳(15-92)で,LSR 78歳,LVR 80歳であり,LVRは女性に対してのみ行った.平均脱出長はLSR 6.2cm,LVR 5.8cmで差はなかった.平均手術時間はLSR 209.3分,LVR 244.7分で,LVRの方が時間がかかっていた.平均出血量はLSR 61.5ml,LVR 58.3mlでであり,差はなかった.術後合併症ではClavien-Dindo分類 Grade IIIbをLSRに2例(3.0%:小腸穿孔,腸閉閉塞),LVRに1例(4.5%:ポート部小腸脱出)認めたが,その他はClavien-Dindo分類 Grade I程度であり有意差は認めなかった.再発は直腸全層の脱出とし,LSR 2例(3.0%),LVR 0例(0.0%)とLVRで低い傾向にあった.
【まとめ】直腸脱は出血や肛門周囲の皮膚炎を起こすだけでなく座位や歩行などにも障害をきたしQOLを著しく低下する.LSRとLVRの合併症は少なく安全に行うことができ,再発率も低かった.今後も全身麻酔が可能な症例に対しては積極的に行っていきたい.
【対象】術式は,70歳未満または70歳以上でも完全直腸脱のみの場合はLSRを,70歳以上で子宮摘出後など骨盤の脆弱性が疑われる場合にはLVRを選択している.2010年6月より2023/12月までに経腹的手術を88例に対して行い,LSRは66例(75%),LVRは22例(25%)であった.
【手術方法】両術式で剥離は直腸後腔は恥骨直腸筋付近まで剥離を行っている.LVRは両側の恥骨直腸筋を露出し,前方は術中に肛門指診を行い肛門縁より約2cmまで行っている.LSRの固定はテニアを岬角の前縦靭帯に2針固定し,LVRはMeshを両側恥骨直腸筋に固定し直腸は7針,前縦靭帯に3針固定している.また完全直腸脱には約30%程度に他の臓器脱が合併することが知られており,子宮のLevel 1の補強目的でMcCallを追加している.McCallは左右の仙骨子宮靭帯と膣後壁を縫合し,LSRではその部位をMeshに固定している.
【結果】年齢の中央値79歳(15-92)で,LSR 78歳,LVR 80歳であり,LVRは女性に対してのみ行った.平均脱出長はLSR 6.2cm,LVR 5.8cmで差はなかった.平均手術時間はLSR 209.3分,LVR 244.7分で,LVRの方が時間がかかっていた.平均出血量はLSR 61.5ml,LVR 58.3mlでであり,差はなかった.術後合併症ではClavien-Dindo分類 Grade IIIbをLSRに2例(3.0%:小腸穿孔,腸閉閉塞),LVRに1例(4.5%:ポート部小腸脱出)認めたが,その他はClavien-Dindo分類 Grade I程度であり有意差は認めなかった.再発は直腸全層の脱出とし,LSR 2例(3.0%),LVR 0例(0.0%)とLVRで低い傾向にあった.
【まとめ】直腸脱は出血や肛門周囲の皮膚炎を起こすだけでなく座位や歩行などにも障害をきたしQOLを著しく低下する.LSRとLVRの合併症は少なく安全に行うことができ,再発率も低かった.今後も全身麻酔が可能な症例に対しては積極的に行っていきたい.