講演情報

[WS3-6]クローン病患者に対する痔瘻手術後の治療と臨床経過

酒匂 美奈子, 岡本 欣也, 西口 貴則, 大久保 亮, 山﨑 大, 岡野 荘, 園田 光, 岩本 志穂, 深田 雅之 (JCHO東京山手メディカルセンター)
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【背景と目的】日本人ではクローン病患者の約半数以上に痔瘻などの肛門病変がみられる.肛門病変の治療において外科治療と生物学的製剤は重要な役割を果たすが,寛解に至らない場合,人工肛門の造設や直腸切断術を施行する必要がある.この研究では,クローン病の痔瘻に対する手術の時期や術後の内科治療,腸管病変の活動性と,再手術率,人工肛門造設率や直腸切断術施行率の関連性を明らかにすることを目的とした.【方法】2003年から2018年に東京山手メディカルセンターにおいて単一術者により痔瘻に対する手術を施行されたクローン病患者のうち5年以上術後経過を観察できた103例(男性79例,女性24例,年齢30±8.6歳)を対象とした.CDの発症から1年以内に痔瘻の手術が行われた症例(早期手術群)は28例(27.2%),2年以降の手術症例(非早期手術群)は75例(72.8%),術後生物学的製剤が導入されていた症例(Bio群)は64例(62.1%),conventionalな治療が行われていた症例(non-Bio群)は39例(37.9%),また,腸管病変が長期に寛解を維持していた症例(remission群)は63例(61.2%),活動期にあったもの(non-remission群)は40例(38.8%)であり,各群のストマ造設率,直腸切断術施行率を調べ,比較検討した.【結果】早期手術群のストマ造設率,直腸切断術施行率はそれぞれ0%(2/28),3.5%(1/29)で,非早期手術群の23.0%(17/75),13.5%(10/75)と比較し低率となる傾向がみられ,両者を合わせた手術施行率は,早期手術群で有意に低下していた(p<0.05).Bio群のストマ造設率,直腸切断術施行率はそれぞれ10.9%(7/64),10.9%(7/64)で,non-Bio群の17.7%(3/39),10.3%(4/39)と比較して差は認められなかった.また,remission群のストマ造設率,直腸切断術施行率はそれぞれ14.3%(9/63),3.2%(2/40),non-remission群における27.5%(11/40),22.5%(9/40)と比較し低率であった.【結論】クローン病の痔瘻に対する手術は発症早期に施行することで良好な予後が期待できる.また,腸管病変の活動性のコントロールは肛門病変の予後にも影響するものと考えられた.