講演情報

[PD6-8]術後合併症発生の観点からみた潰瘍性大腸炎手術における内科外科連携の重要性

藤本 浩輔1, 小山 文一1,2, 久下 博之1, 岩佐 陽介1,2, 高木 忠隆1, 田村 昂1, 江尻 剛気1, 吉川 千尋1 (1.奈良県立医科大学消化器・総合外科, 2.奈良県立医科大学附属病院中央内視鏡部)
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【はじめに】潰瘍性大腸炎に対する内科治療の選択肢の増加に伴い,外科手術のタイミングの判断が難しくなっている.【目的・方法】2010年1月から2023年12月に当院初診となり,その後当科で手術施行した59例のうち,癌/dysplasiaを理由として手術を施行した9例を除外した50例を対象とし,術後重篤合併症発生に関連する因子を検討した.【結果】手術症例の男女比は男性/女性は31/19例,手術時年齢および罹病期間の中央値は54歳(10-76)および2.8年(0.1-41.7)であった.罹患範囲は左側結腸炎型/全大腸炎型が2/58例,病型は初回発作型/再燃寛解型/慢性持続型が7/7/36例,当院初診時の重症度は中等症/重症が24/19例であった.当院初診から手術までの期間は中央値2.4ヶ月(0-128)であった.免疫抑制薬,生物学的製剤あるいはJAK阻害薬を導入した症例は38例(76%),それらの薬剤を2剤以上使用した症例は24例(50%)であった.初回手術の術式は大腸亜全摘術/IAA/TPCが23/22/5例であった.手術時間,出血量の中央値は326分,70mlであった.術後合併症は25例(50%)認め,Clavian-Dindo(C-D)III/IVの合併症は12(24%)/4(8%)例であった.術後重篤合併症(C-D IIIa以上)に関連する因子として,単変量解析では当院初診から手術までの期間1ヶ月以内,慢性持続型臨床経過が抽出され,多変量解析では初診から手術までの期間1ヶ月以内が独立したリスク因子として抽出された.C-D IV以上の合併症4例のうち3例は初診から手術までの期間が0-3日であり,2例は初診時に中毒性巨大結腸症を呈し,1例は低アルブミン血症(1.7g/dL)を呈する内科的治療不応の全身状態不良例であった.【結語】当科における潰瘍性大腸炎に対する手術において,初診から手術までの期間が短期間であることが重篤な術後合併症発生のリスク因子であった.潰瘍性大腸炎において至適な手術のタイミングをはかるには院内だけでなく,近隣病院との連携の重要性が示唆された.