講演情報

[WS2-7]クローン病に対する低侵襲手術:腹腔鏡手術および術中小腸内視鏡の有用性

茂田 浩平1, 角田 潤哉1, 岡林 剛史1, 森田 覚1, 清島 亮1, 三上 洋平2, 金井 隆典2, 北川 雄光1 (1.慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器), 2.慶應義塾大学医学部消化器内科)
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【背景】当施設では初回手術,再発手術を問わず,積極的に腹腔鏡手術(Lap)を施行している.また,術中全小腸内視鏡検査(Intraoperative complete enteroscopy:ICE)を行い,小腸全体をリアルタイムに評価している.本研究では,クローン病に対するLapおよびICEの短期及び長期成績について報告する.
 【方法】2006年から2023年の期間に,当院で腹部手術を施行したCD患者226例を対象とし,後方視的に臨床的背景因子や手術関連因子について収集した.術後合併症の発生および術後入院期間を短期成績,Surgical recurrenceおよび無病再発期間(Disease free survival:DFS)を長期成績とし,統計学的解析を行った.
 【手術成績】対象の226例のうち,男性は166例,女性は60例,年齢の平均値は38.9±11.2歳,罹患年数の平均値は12.5±9.2年であった.開腹手術(Open)は69例(31%),Lapは157例(69%)に施行された.98例はクローン病の再燃に対する手術であり,55例は1回,21例は2回,12例が3回,10例は4回以上の手術歴を有していた.再発例の前回手術方法は77例がOpenであり,前回Lapが選択されていたのは21例であった.Lapの開腹移行は19例(初回手術7例,再発手術12例)に認めた.Clavien Dindo分類(CD)III以上の術後合併症は,Openで13例,Lapで14例であり,有意にLap群が少なかった.術後入院期間はOpenが18.7±8.8日に対し,Lapが17.8±14.7日と有意な差は認めなかった.DFSについてCox回帰分析を行ったところ,OpenとLapの間に有意な差は認めなかった(p=0.55).
 【ICE】226例中,ICEは45例に施行された.術後合併症は16例(36%)に認め,抗菌薬投与が必要なSurgical site infectionを10例に認めたが,CD IIIb以上の合併症は認めなかった.手術中に消化器内科医と協議しながら追加切除または狭窄形成術を9例に追加した.術後,1例にCDの再燃を認め,再手術を要した.
 【結語】CD患者に対するLapおよびICEは安全に施行することが可能であり,Lap群で短期成績は良好であったが,長期成績に差は認めなかった.LapおよびICEの実施により腹腔内および残存小腸全体の病変を内科・外科医ともに共有可能であり,術後の“treat-to-target”治療戦略の一助となる可能性がある.