講演情報

[P9-1-5]多様な遠隔転移を繰り返しつつも長期生存が得られている直腸GIST再発の1例

鈴木 健太1, 梶原 由規1, 岡本 耕一1, 山寺 勝人1, 曽田 悠葵1, 田代 恵太1, 川内 隆幸1, 菊家 健太1, 相原 一紀1, 田代 真優1, 廣瀬 祐一1, 大塚 泰弘1, 井本 良敬1, 島崎 英幸2, 岸 庸二1, 上野 秀樹1 (1.防衛医科大学校外科学講座, 2.防衛医科大学校病院検査部病理)
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Gastrointestinal stromal tumor(GIST)は消化管の間葉系腫瘍では最も多いとされており,遠隔臓器への転移や腹膜播種を来すことが知られている.直腸GIST局所再発の切除後に多様な遠隔転移を認め,外科的切除と抗腫瘍薬投与の組み合わせにより長期生存を得ている1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.
 症例は50歳時に直腸GISTを切除した男性.初発時(X年)に原発巣に対して超低位前方切除術を施行した.切除検体にて腫瘍最大径が55mmで核分裂像が目立ち,高悪性度のGISTの病理診断であった.術後補助療法としてイマチニブを開始したが10か月で自己中断した.X+2年に局所再発をきたし,骨盤内臓器全摘術を施行した.術後にイマチニブを再開したが2カ月で自己中断.X+2年6か月で右肺転移を認め,右肺下葉部分切除術を施行した.以後,イマチニブを再開した.X+4年4か月にCTで右肺尖部に小結節が指摘され,再発の有無を確認するためにイマチニブを一時休薬として精査を開始したところ,2か月後のPET/CTで右肺尖部以外に,胃,左大腿軟部組織(小殿筋,縫工筋)にFDGの集積を認めた.GISTの多発再発と診断し,イマチニブを再開したところ,投与再開2か月後のCTで肺転移および左大腿軟部組織の再発巣は縮小傾向を示した.以後,イマチニブの投与を継続したが,左大腿部の再発巣のみ増大を示したためX+5年10か月に左大腿軟部の腫瘍切除を施行した.病理所見はGISTの転移で切除断端は陰性であった.X+7年4か月に右大殿筋への転移を認め,2ヵ月後に肺転移と共に増大傾向を示したため,イマチニブ耐性と判断してスニチニブの投与を開始した.以後,約10ヵ月間スニチニブ投与を継続したが,左大殿筋転移および胃転移の増大を認め,X+8年4か月および6ヵ月に右大殿筋転移巣切除,胃部分切除をそれぞれ施行した.また,X+8年7ヵ月のPET/CTでは右肺転移以外の集積を認めなかったため,右肺上葉部分切除術を施行した.上記切除検体の病理組織はいずれもGISTの再発,転移巣として矛盾しない所見であった.以後はイマチニブの内服を再導入し,X+10年時点において新規の転移再発を認めていない.