講演情報

[R13-1]大腸癌同時性傍大動脈リンパ節転移に対する傍大動脈リンパ節郭清の当科における成績

中西 彬人, 藤井 能嗣, 岡崎 直人, 石山 泰寛, 石井 利昌, 平沼 知加志, 芥田 壮平, 大和 美寿々, 皆川 結明, 平能 泰充 (埼玉医科大学国際医療センター下部消化管外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】大腸癌治療ガイドラインにて,傍大動脈リンパ節転移は切除により根治や生存期間の延長を得られる症例が一定頻度ある,と記載されているが,症例によって転移の状態も異なり,定まった治療方針がないのが現状である.
 【目的】大腸癌同時性傍大動脈リンパ節転移症例で傍大動脈リンパ節郭清を行った症例の臨床病理学的因子や術後成績を明らかにし,傍大動脈リンパ節郭清の妥当性を検証する.生検とサンプリング症例は除外した.
 【方法】2008年4月から2022年12月までに当科で大腸癌同時性傍大動脈リンパ節転移に対して原発切除・傍大動脈リンパ節郭清を施行し,病理学的に傍大動脈リンパ節転移を認めた13症例の臨床病理学的因子と術後成績を後方視的に検討した.
 【結果】年齢中央値59歳,男性4名,女性9名.病変部位と術式はA/Open RH 1例,D/Open LH 1例,S/Open S 4例,S/LapS 2例,Rs/Open HAR 1例,Ra/lap LAR 1例,Rb/lapLAR 2例,Rb/Lap ISR 1例,であった.全例にD3リンパ節郭清・216郭清が施行された.根治度はA 1例,B 7例,C 5例であった.手術時間中央値は267分,出血量中央値は149ml,術後在院日数中央値は8日であった.術後合併症は5例あり,それぞれClavien-Dindo分類Grarde3Bの縫合不全1例,Grade2のSSI 1例,Grade1の腸管麻痺1例,Grade1のリンパ漏1例を認めた.pTについては9例がpT3,2例がpT4a,2例がpT4bであり,pNはN0 1例,N1b 1例,N2b 7例,N3 4例,cM(216リンパ節転移以外)については2例は肝転移,1例は肺転移,1例は肺転移と副腎転移,1例は両側卵巣転移であった.4症例に術後化学療法を施行していた.根治度C 5症例の全生存期間中央値682日であったが,根治度A,B 8症例の全生存期間中央値は1437日であった.
 【おわりに】大腸癌同時性傍大動脈リンパ節転移に対して原発切除と傍大動脈リンパ節郭清は比較的安全に施行可能であるが,根治度Cの症例とくらべて根治度A,Bの症例では比較的予後良好であり,選択する症例によっては切除により長期予後が見込める可能性が示唆された.今後さらなる症例の蓄積により,大腸癌同時性傍大動脈リンパ節転移症例に対する,原発巣との同時性の郭清を含めた治療法の選択基準を明確にしていくことを目標とする.