講演情報

[PD1-2]直腸腫瘍術後患者における新低位前方切除術後症候群定義をもとにした発症頻度/リスク因子を検討する多施設共同横断観察研究

渥美 陽介1, 沼田 正勝1, 沼田 幸司2, 塩澤 学2, 風間 慶祐3, 澤﨑 翔3, 杉山 敦彦4, 虫明 寛行4, 菅野 伸洋5, 五代 天偉6, 片山 雄介7, 樋口 晃生8, 内山 護9, 三箇山 洋9, 齋藤 健太郎10, 高村 卓志10, 佐藤 勉1, 齋藤 綾3 (1.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科, 2.神奈川県立がんセンター大腸外科, 3.横浜市立大学外科治療学, 4.済生会横浜市南部病院外科, 5.平塚共済病院外科, 6.藤沢湘南台病院外科, 7.秦野赤十字病院外科, 8.横浜南共済病院外科, 9.神奈川県立足柄上病院外科, 10.国際医療福祉大学熱海病院外科)
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【背景】
 低位前方切除後症候群(LARS)には多様な症状があり,その曖昧な定義から有病率を正確に特定することが困難であった.そこで2018年に国際コンセンサス会議が開催され,8つの症状と結果による新たなLARS定義が確立されたが,この新LARS定義に基づく有病率はまだ報告されていない.
 【目的】
 新LARS定義を用いて,新LARS有病率を調査し,リスク因子を同定すること.
 【方法】
 対象:直腸癌/NETに対して2020/4/1~2022/9/30の期間に低位前方切除(LAR),超低位前方切除(sLAR),括約筋間直腸切除術(ISR)を施行され半年以上フォロー中の無再発症例.
 評価法:新LARS定義をもとに当研究グループで作成した日本語版新LARSアンケートを用いて,外来アンケート調査(1地点).術後経過期間で分類し,有病率を比較.
 【結果】
 症例数:363例(回答率 95%).年齢中央値:68歳,男/女=58.4/41.6%,主占居部位:RS/Ra/Rb=12.4/44.6/43.0%,術前放射線治療例:4.1%,術式:LAR/sLAR/ISR=73.8/20.1/6.1%,アプローチ:開腹/腹腔鏡/Robot=2.5/60.6/36.9%,肛門縁-吻合部距離中央値:5cm,術後経過期間中央値:18.4ヵ月.新LARS有病率は,全体では73.3%,術後経過期間別では0-6/6-12/12-18/18-24/24-30/30-36/36-48か月=75.0/73.5/80.2/75.0/65.7/74.2/50.0%であった.新LARS症状別の解析では短時間内の頻回便/多様で予測不能な排便/便意促迫の頻度が特に高く(98.5/93.6/90.2%),8症状いずれも術後経過期間による頻度の差は認めなかった.従来LARSスコア分類別の新LARS頻度はNo/Minor/Major LARS=31.7/71.3/94.8%であった.多変量解析では70歳未満,肛門縁-吻合部距離5cm以下が新LARSの独立リスク因子として同定された.
 【結語】
 直腸術後の新LARS有病率は高く,術後経過期間による差は認められず,若年例,低位吻合がリスク因子となる可能性が示唆された.