講演情報

[P15-2-2]直腸アニサキス症の1例

佐井 佳世, 松島 小百合, 米本 昇平, 酒井 悠, 鈴木 佳透, 紅谷 鮎美, 小菅 経子, 彦坂 吉興, 松村 奈緒美, 河野 洋一, 宋 江楓, 下島 裕寛, 岡本 康介, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター)
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症例は64歳,男性.1日前からの排便時の出血と痛みを主訴に当院を受診した.血液検査結果はWBC 15000/μL,BUN 40.9 mg/dL,Cre 3.32 mg/dLであり炎症反応上昇と腎機能障害を認めた.
 肛門診察では明らかな痔核は認めなかった.直腸診では粗造な粘膜を触れ,S状結腸内視鏡検査では直腸Rbに全周性の粘膜壊死と白苔の付着を認めた.悪性腫瘍の可能性も否定できず,精査加療目的に近医へ紹介とした.
 紹介先の下部消化管内視鏡検査にて直腸にアニサキス虫体を認め,直腸アニサキス症の診断であった.
 直腸粘膜壊死様の所見を呈する原因の鑑別としては,大腸4型腫瘍,潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患,虚血性大腸炎壊疽型,宿便性潰瘍などが挙げられ,本症例では腫瘍性の変化を疑い他院紹介とした.
 消化管アニサキス症は胃アニサキス症,腸アニサキス症,腸管外アニサキス症の3つの病型に分類される.そのほとんどは胃であり腸アニサキス症は全体の12.7%であり,さらに大腸アニサキス症は全体の1%程度とされている.中でも,直腸アニサキス症は大腸アニサキス症の1%程度と非常に稀な疾患である.今回,我々は直腸アニサキス症の1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.