講演情報

[VPD1-6]二期的弧状切開法による深部痔瘻手術

石山 元太郎, 秋月 恵美, 小山 良太, 及能 拓朗, 佐藤 綾, 西尾 昭彦, 石山 勇司 (札幌いしやま病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】深部痔瘻にたいする当院の治療方針は,肛門機能を可及的に温存しながら,いかに全ての痔瘻組織を切除または開放するかということに尽きる.このため肛門後方に弧状切開創を作成し,良好な視野から痔瘻組織を確実に切除する方法で手術を行っているが,この方法では開放創が大きくなるため,一期的に1次瘻管を解放してしまうと括約筋が離開して肛門機能の低下を招く恐れがある.このため,創部の閉鎖を待ってから1次瘻管を解放する二期的手術を行っている.今回,本法の手術手技と治療成績について報告する.【結果】2014年1月~2017年12月までに当院で施行したクローン病や痔瘻癌を除いた深部痔瘻手術症例は139例であり,男女比は122:17,平均年齢は47.2(16-17)歳であった.痔瘻型ではIII型が110例,III型+IIHが15例,IV型が14例であった.初回手術の平均手術時間は48.9(14-118)分,初回手術から括約筋開放までの期間は平均で7.8週であった.初回手術から創治癒までの期間は平均で13.8週であった.原発巣レベルでの再発は1例(0.7%)であったが,2次感染巣の遺残によると思われた再発が12例(8.6%)あった.術前後の肛門内圧変化では,MSPの術前後での減少率は6.2%であり有意差はなかったが,MRPが23.3%低下しており,有意に内圧低下を認めた.術後にガスや軟便の漏れを自覚した症例が3症例あったが,術後14週までに全例が保存的に軽快していた.【考察】二期的弧状切開法は,痔瘻の根治性と機能温存という相反する目的を達成するために有効な治療法と考えられた.