講演情報
[PD2-3]術中AI解剖認識技術の有用性の探索:エビデンス構築に向けた取り組み
北口 大地1,2, 布施 匡啓1, 小杉 範仁1, 長谷川 寛1,2, 竹下 修由1, 伊藤 雅昭1,2 (1.国立がん研究センター東病院医療機器開発推進部門, 2.国立がん研究センター東病院大腸外科)
背景:術中臓器損傷の回避や適切な剥離層の同定のためにはランドマークとすべき解剖構造の位置関係を正確に把握することが重要である.AIによる画像解析技術を用いた重要解剖構造の表示は,外科医の負担を軽減し,手術全体の質の向上につながる可能性が期待される.
目的:腹腔鏡下大腸切除術における尿管および自律神経をリアルタイムに自動認識するAIモデルを開発し,同モデルの認識性能を評価する.開発したモデルを実際の手術に導入し,その認識性能を外科医と比較する.
方法:モデル開発には2015年1月から2021年12月に施行された手術動画を用いた.モデルの認識性能の定量評価指標としてDice係数を用いた.モデルvs外科医の認識性能比較試験は単施設前向き観察研究として施行し,2021年9月から2022年2月に腹腔鏡下左側大腸切除術を受けた患者,ならびに同手術を執刀した内視鏡外科技術認定医6人,非技術認定医6人,合計12人の外科医を対象とした.実際の手術環境でモデルの認識性能を評価すると共に,認識対象が画面内に出現してから認識までに要した時間を外科医と比較した.
結果:教師データとして35,083枚,テストデータとして8,215枚,合計43,298枚のアノテーション画像を用いて開発したAIモデルの認識性能(Dice係数)は尿管0.722,下腹神経0.579,大動脈神経叢0.628であった.20症例におけるモデルvs外科医の計89回の比較では,モデルが外科医より早く対象を認識できたシーンは69回(75%)であった.技術認定資格別の検討では,モデルが技術認定医より早く対象を認識できたのが29/44回(66%)であったのに対し,非技術認定医より早く対象を認識できたのは38/45回(84%)であった.
結語:開発したAIモデルは腹腔鏡下大腸切除術における尿管と自律神経を外科医より早く認識することができ,この傾向は経験の浅い外科医でより顕著であった.これらの結果からAIナビゲーションが外科医のスキルや経験を補填できる可能性が示唆された.AIナビゲーション手術の有用性に関するさらなるエビデンス構築に向け,現在AIナビゲーション使用群vs非使用群を比較する多施設共同RCTを遂行中である.
目的:腹腔鏡下大腸切除術における尿管および自律神経をリアルタイムに自動認識するAIモデルを開発し,同モデルの認識性能を評価する.開発したモデルを実際の手術に導入し,その認識性能を外科医と比較する.
方法:モデル開発には2015年1月から2021年12月に施行された手術動画を用いた.モデルの認識性能の定量評価指標としてDice係数を用いた.モデルvs外科医の認識性能比較試験は単施設前向き観察研究として施行し,2021年9月から2022年2月に腹腔鏡下左側大腸切除術を受けた患者,ならびに同手術を執刀した内視鏡外科技術認定医6人,非技術認定医6人,合計12人の外科医を対象とした.実際の手術環境でモデルの認識性能を評価すると共に,認識対象が画面内に出現してから認識までに要した時間を外科医と比較した.
結果:教師データとして35,083枚,テストデータとして8,215枚,合計43,298枚のアノテーション画像を用いて開発したAIモデルの認識性能(Dice係数)は尿管0.722,下腹神経0.579,大動脈神経叢0.628であった.20症例におけるモデルvs外科医の計89回の比較では,モデルが外科医より早く対象を認識できたシーンは69回(75%)であった.技術認定資格別の検討では,モデルが技術認定医より早く対象を認識できたのが29/44回(66%)であったのに対し,非技術認定医より早く対象を認識できたのは38/45回(84%)であった.
結語:開発したAIモデルは腹腔鏡下大腸切除術における尿管と自律神経を外科医より早く認識することができ,この傾向は経験の浅い外科医でより顕著であった.これらの結果からAIナビゲーションが外科医のスキルや経験を補填できる可能性が示唆された.AIナビゲーション手術の有用性に関するさらなるエビデンス構築に向け,現在AIナビゲーション使用群vs非使用群を比較する多施設共同RCTを遂行中である.