講演情報

[PD5-8]内視鏡的に切除された15mm以下の大腸T1癌の検討:多施設後ろ向き研究

田中 寛人1, 栗林 志行1, 関口 雅則2, 岩本 敦夫3, 蜂巣 陽子4, 深井 泰守5, 中山 哲雄6, 古谷 健介7, 増田 智之8, 高橋 和宏9, 丸橋 恭子10, 竹内 洋司1, 浦岡 俊夫1 (1.群馬大学大学院医学系研究科消化器・肝臓内科学, 2.伊勢崎市民病院内科, 3.公立富岡総合病院消化器内科, 4.済生会前橋病院消化器内科, 5.前橋赤十字病院消化器内科, 6.東邦病院消化器内科, 7.国立病院機構渋川医療センター消化器内科, 8.国立病院機構高崎総合医療センター消化器内科, 9.原町赤十字病院内科, 10.くすの木病院消化器・肝臓内科)
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【目的】
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は大腸T1癌に対する高い一括切除率が知られている一方,内視鏡的粘膜切除術(EMR)が比較的小型T1癌に対して内視鏡的切除法の第一選択となるかは十分に検討されておらず,今回15mm以下の大腸T1癌に対するEMRの治療成績と予後を検討することを目的とした.
 【方法】
 2009年4月~2019年8月当院およびその関連施設(10施設)における内視鏡治療(EMR,polypectomy,ESD)が行われ病理組織学的に15mm以下の大腸T1癌と診断された174例174病変の治療成績を後方視的に検討した.
 【結果】
 EMR/polypectomy:160例(EMR群),ESD:14例(ESD群).年齢(中央値,range),病変径(中央値,range),一括切除n(%):EMR群/ESD群69(35-85)/68(36-80)歳,10(4-15)/12(8-15)mm,149例(93.1%)/13例(92.9%).非治癒切除の125例:EMR群112例(92.9%)/ESD群13例(70%)[MOU1]のうち,70例(EMR群60例,ESD群10例)が追加外科切除を受け,55例(EMR群52例,ESD群3例)が経過観察となった.観察期間中央値(月)はEMR群/ESD群で35.0(IQR:12.75-65.0)/19.5(IQR:5.75-57.5)で,治癒切除および追加外科切除を受けた群に再発は認めなかった.非治癒切除かつ経過観察群からは2例の再発を認めた.再発を認めた症例は脈管侵襲陽性かつ垂直断端陽性および分割切除となった症例で,再発後に手術を受けその後無再発を維持している.
 【結語】
 今回の検討から,臨床の現場ではEMRやpolypectomyが比較的小型の大腸T1癌に対する標準的な治療として行われていることが明らかとなった.分割切除は病理組織学的評価が困難になることや局所再発の面からも避けるべきであるが,一括切除が可能なT1癌に対するEMRやpolypectomyは患者の負担や医療費の面からも許容できると考えられた.