講演情報
[P6-2-7]大腸粘液性腺癌の補助化学療法効果の検討
秋山 貴彦, 松井 信平, 甲津 卓実, 野口 竜剛, 坂本 貴志, 向井 俊貴, 山口 智弘, 秋吉 高志, 福長 洋介 (がん研究会有明病院大腸外科)
【背景】化学療法は大腸癌の生存率を向上させるために重要な役割を果たしており,手術後高リスクステージIIおよびステージIII期の患者には補助化学療法が推奨される.術後補助化学療法は大腸癌の治療において重要な役割を果たすものの,適応については病理学的なTNM分類に基づいており,大腸癌の組織学的分類に関係なく行われているのが現状である.粘液性腺癌(MAC)は大腸癌の組織学的分類では腺癌(AC)に次いで2番目に多く,特に虫垂ではACと比較してその割合が多く,予後良好であることが報告されている一方で,大腸癌全体としてMACは予後不良であり,その原因については化学療法に対する治療抵抗性などが示唆されている.
【目的・方法】2009年1月~2017年12月の期間にR0切除を行った虫垂を除くpStageII~IVの初発大腸癌患者2533症例を対象とし,MAC群とAC群を比較して患者背景や切除後,術後補助化学療法の有無による治療成績について検討した.
【結果】AC群2458例(97.0%),MAC群75例(3.0%)であった.患者背景は年齢,性別,進行度の割合に有意差は認めず,MAC群で有意に下部直腸癌の割合が多く,CA19-9が高かった.pStage IIで5年無再発生存率(RFS)はAC群で86.2%,MAC群で77.6%と有意差は認めなかった(p=0.14)が,pStage IIIでは5年RFSはAC群で72.7%,MAC群で50.4%とMAC群は有意に予後不良であった(p=0.001).pStage IIIのAC群で術後補助化学療法施行症例の5年RFSは75.8%であり,施行しなかった症例と比較して有意に予後良好(vs. 52.8%,p<0.001)であった一方,pStage IIIのMAC群では術後補助化学療法施行症例の5年RFSは50.9%であり施行しなかった症例と比較して有意差は認めなかった(vs. 50.0%,p=0.69).MAC群におけるRFSに関する単変量解析では直腸原発,転移リンパ節数7個以上,pStageIII以上が予後不良因子として同定され,多変量解析では直腸原発,転移リンパ節数7個以上が独立した予後不良因子として同定された.
【結論】pStageIII以上の大腸MAC症例は術後補助化学療法に対して治療抵抗性を示す可能性が示唆された.MACの分子学的特性に応じた新たな治療戦略の確立が今後求められる.
【目的・方法】2009年1月~2017年12月の期間にR0切除を行った虫垂を除くpStageII~IVの初発大腸癌患者2533症例を対象とし,MAC群とAC群を比較して患者背景や切除後,術後補助化学療法の有無による治療成績について検討した.
【結果】AC群2458例(97.0%),MAC群75例(3.0%)であった.患者背景は年齢,性別,進行度の割合に有意差は認めず,MAC群で有意に下部直腸癌の割合が多く,CA19-9が高かった.pStage IIで5年無再発生存率(RFS)はAC群で86.2%,MAC群で77.6%と有意差は認めなかった(p=0.14)が,pStage IIIでは5年RFSはAC群で72.7%,MAC群で50.4%とMAC群は有意に予後不良であった(p=0.001).pStage IIIのAC群で術後補助化学療法施行症例の5年RFSは75.8%であり,施行しなかった症例と比較して有意に予後良好(vs. 52.8%,p<0.001)であった一方,pStage IIIのMAC群では術後補助化学療法施行症例の5年RFSは50.9%であり施行しなかった症例と比較して有意差は認めなかった(vs. 50.0%,p=0.69).MAC群におけるRFSに関する単変量解析では直腸原発,転移リンパ節数7個以上,pStageIII以上が予後不良因子として同定され,多変量解析では直腸原発,転移リンパ節数7個以上が独立した予後不良因子として同定された.
【結論】pStageIII以上の大腸MAC症例は術後補助化学療法に対して治療抵抗性を示す可能性が示唆された.MACの分子学的特性に応じた新たな治療戦略の確立が今後求められる.