講演情報

[R12-1]当科における局所進行直腸癌に対する術前治療の現況と治療成績

太田 竜1, 武田 幸樹1, 関口 久美子1, 清水 貴夫1, 山田 岳史2, 谷合 信彦1, 吉田 寛2 (1.日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科, 2.日本医科大学付属病院消化器外科)
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【緒言】局所進行直腸癌における術前治療は欧米では標準治療となっているが,本邦ではその適応や治療内容,成績などについては明確となっていない.また術前治療による手術難易度上昇や術後合併症増加も懸念される.
 【目的】当科における局所進行直腸癌に対する術前治療の現況と成績について,術前治療非施行群と比較しその有用性を明らかにする.
 【対象と方法】術前治療を積極的に導入開始した2022年4月以降に原発巣切除を行った直腸癌症例を対象とした.術前治療の適応は遠隔転移のないcT4以深,cN2以上,EMVI陽性,壁外進展陽性,CRM1mm未満のいずれかに該当する症例とした.術前治療施行群をPT群,非施行群をNT群とし,患者背景,腫瘍学的因子,手術因子等について比較検討した.
 【結果】対象症例は51例で,PT群15例,NT群36例であった.PT群では前治療としてTNT11例,CRT2例,NAC1例が行われていた.患者背景に有意差はなく,腫瘍学的因子では深達度,リンパ節転移,Stageに有意差を認め,PT群がより進行した症例であった.手術因子では,術式,アプローチ法,肛門温存率に差はなく,PT群で側方リンパ節郭清頻度が高く,手術時間,出血量はPT群で有意に上昇していた.合併症,術後在院日数に有意差は認めなかった.StageIII症例を抽出して比較すると,対象症例は28例で,PT群15例,NT群13例であった.患者背景に有意差はなく,腫瘍学的因子ではPT群で占拠部位Rb,側方リンパ節転移症例が有意に多かった.手術因子では,PT群で側方リンパ節郭清症例,手術時間,出血量が有意に多かった.合併症,術後在院日数に有意差は認めなかった.
 【結語】局所進行直腸癌に対する術前治療施行例では,側方リンパ節転移を伴う下部直腸症例が多いため手術時間延長や出血量増加を生じていたが,術前治療非施行例と比較し遜色のない周術期治療成績であった.観察期間が短く予後を含めた長期成績は未だ不明であるため,症例の集積とともにその解明が望まれる.