講演情報
[P2-1-5]経直腸的前立腺生検後の遅発性直腸出血の一例
瀧山 亜希, 齋藤 晋祐, 磯部 陽 (山王病院消化器センター)
症例は41歳男性,既往歴は20歳時に肝炎(詳細不明)のみで治療中の疾患なし,内服なし,アレルギーなし.前年の検診でPSA 4.30ng/mLと軽度高値を認め,半年後のフォロー採血で4.93 ng/mLとわずかだが上昇傾向あり,泌尿器科で経直腸的超音波ガイド下前立腺生検(以下前立腺生検)を計画された.フォロー採血から2か月後に当院泌尿器科に入院し静脈麻酔下に砕石位で前立腺生検を実施.手術時間5分,麻酔時間19分,出血量0mlで系統的に12か所生検を実施され特に問題なく終了し,術後も血尿などの合併症なく翌日(1POD)退院となった.退院の翌日(2POD)午前に肉眼的血尿が出現,その翌日(3POD)朝には凝血塊を含む血尿を認め,4PODに泌尿器科受診.尿検査の結果は赤血球多数だが白血球は0-1/HPで感染は否定的,前立腺生検に伴う出血と考え止血剤の内服を開始して経過観察となった.血尿は改善傾向となったが,6PODの夕方から複数回の下血を認め,7POD午前に再度泌尿器科を受診.前立腺生検後の直腸後出血疑いで当科受診となった.
肛門鏡の観察では直腸下部に中等量の凝血塊および鮮血を認め,出血点は視認できなかった.用手的に直腸前壁の圧迫止血を試みたが止血が得られないため,同日午後に緊急で下部消化管内視鏡検査を施行した.AV5cmの下部直腸前壁に生検部位と思われる隆起を認め,その頂点にはコアグラが付着しゆっくりとした出血を認めた.他に出血点は認めなかったため,出血点にクリップをかけようと洗浄したところ,コアグラが取れて動脈性の出血を認めた.1stクリップで止血が得られたが,念のため計4個のクリップをかけて止血処置を終了.そのまま緊急入院として慎重に経過を観察したが,その後は新たな出血を疑う所見はなく,緊急入院から4日目に退院,その後も下血の再燃を認めなかった.
前立腺生検の合併症として,血尿(12%),血精液症(1.2%)と並んで直腸出血(5.9%)は比較的頻度が高いとされるが,そのほとんどは生検直後にみられ,遅発性の出血は稀とされている.生検部がDieulafoy's 潰瘍と化した可能性も含め,文献的考察を加えて報告する.
肛門鏡の観察では直腸下部に中等量の凝血塊および鮮血を認め,出血点は視認できなかった.用手的に直腸前壁の圧迫止血を試みたが止血が得られないため,同日午後に緊急で下部消化管内視鏡検査を施行した.AV5cmの下部直腸前壁に生検部位と思われる隆起を認め,その頂点にはコアグラが付着しゆっくりとした出血を認めた.他に出血点は認めなかったため,出血点にクリップをかけようと洗浄したところ,コアグラが取れて動脈性の出血を認めた.1stクリップで止血が得られたが,念のため計4個のクリップをかけて止血処置を終了.そのまま緊急入院として慎重に経過を観察したが,その後は新たな出血を疑う所見はなく,緊急入院から4日目に退院,その後も下血の再燃を認めなかった.
前立腺生検の合併症として,血尿(12%),血精液症(1.2%)と並んで直腸出血(5.9%)は比較的頻度が高いとされるが,そのほとんどは生検直後にみられ,遅発性の出血は稀とされている.生検部がDieulafoy's 潰瘍と化した可能性も含め,文献的考察を加えて報告する.