講演情報
[O24-8]肛門粘膜下を縦走するTreitz' muscleは内肛門括約筋の筋束が方向を転じた平滑筋である
室生 暁, Danyo Edinam, 秋田 恵一 (東京科学大学臨床解剖学分野)
【背景】肛門管の粘膜下にはTreitz' muscle(肛門粘膜下筋,M. submucosae ani)と呼ばれる平滑筋層があり,痔核や痔瘻の病態との関連が指摘されている.Treitz' muscleは内肛門括約筋と粘膜上皮の間を縦走し,肛門の静脈叢を支え,anal cushionの形成に寄与していると考えられている.しかし,Treitz' muscleの解剖学的詳細は未だ明らかでない.そこで,Treitz' muscleの構造を明らかにするために解剖学的研究を行った.
【方法】解剖実習体10体を用いて,肉眼解剖学的検索および免疫組織学的解析を行った.肉眼解剖学的検索では,骨盤部を正中矢状断または肛門管の軸に平行な前額断で切断した標本を用い,肛門管の側壁・前壁・後壁を内腔側から解剖した.免疫組織学的解析では,肛門管の側壁・前壁・後壁から採取した標本を用いて,Masson Trichrome染色,抗平滑筋免疫染色を行った.
【結果】肉眼解剖学的検索では,内肛門括約筋の最も内腔側の筋束が一部で方向を転じ縦走する様子が観察され,これをTreitz' muscleと同定した.筋束の方向転換は肛門管の前外側部で起こり,前方に向かって斜めに下行するものと,外側後方に向かって斜めに下行するものが見られた.組織学的解析では,肛門管の粘膜上皮と内肛門括約筋の間の層に縦走するTreitz' muscleを認め,免疫染色によりこれが平滑筋であることが示された.Treitz' muscleは内肛門括約筋の平滑筋線維と連続して起こり,内肛門括約筋の内腔側を下行し,肛門管下部では外肛門括約筋の表面を走行し皮下に放散していた.Treitz' muscleの近傍には静脈叢が発達していた.
【結論】Treitz' muscleは内肛門括約筋の筋束が方向を転じ,内肛門括約筋の表層を縦走する平滑筋である.内肛門括約筋からTreitz' muscleが起こる筋束の方向転換は,肛門管の前外側壁によく見られ,Treitz' muscleが肛門管の全周にわたって均一に分布しているわけではないことが示唆された.
【方法】解剖実習体10体を用いて,肉眼解剖学的検索および免疫組織学的解析を行った.肉眼解剖学的検索では,骨盤部を正中矢状断または肛門管の軸に平行な前額断で切断した標本を用い,肛門管の側壁・前壁・後壁を内腔側から解剖した.免疫組織学的解析では,肛門管の側壁・前壁・後壁から採取した標本を用いて,Masson Trichrome染色,抗平滑筋免疫染色を行った.
【結果】肉眼解剖学的検索では,内肛門括約筋の最も内腔側の筋束が一部で方向を転じ縦走する様子が観察され,これをTreitz' muscleと同定した.筋束の方向転換は肛門管の前外側部で起こり,前方に向かって斜めに下行するものと,外側後方に向かって斜めに下行するものが見られた.組織学的解析では,肛門管の粘膜上皮と内肛門括約筋の間の層に縦走するTreitz' muscleを認め,免疫染色によりこれが平滑筋であることが示された.Treitz' muscleは内肛門括約筋の平滑筋線維と連続して起こり,内肛門括約筋の内腔側を下行し,肛門管下部では外肛門括約筋の表面を走行し皮下に放散していた.Treitz' muscleの近傍には静脈叢が発達していた.
【結論】Treitz' muscleは内肛門括約筋の筋束が方向を転じ,内肛門括約筋の表層を縦走する平滑筋である.内肛門括約筋からTreitz' muscleが起こる筋束の方向転換は,肛門管の前外側壁によく見られ,Treitz' muscleが肛門管の全周にわたって均一に分布しているわけではないことが示唆された.