講演情報

[R19-7]直腸脱手術症例において抗血栓治療が及ぼす影響の検討

川原 洋平, 田畑 敏, 吉田 貢一 (市立砺波総合病院)
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(はじめに)近年,高齢化に伴って,脳血管・心血管合併症などを有し抗血栓治療が施されている直腸脱症例は少なくない.今回,直腸脱手術症例において抗血栓治療が周術期の経過および術後成績に及ぼす影響を検討した.(対象と方法)2019年1月から2024年4月までの期間に,当科で直腸脱に対し手術を施行した142例を対象として,術前から抗血栓治療が行われていた群と非治療群とで,患者背景因子・手術術式選択・麻酔方法・術後経過・周術期合併症・術後成績について比較検討した.2020年以降の手術術式は基本的に直腸脱診療ガイドラインに基づいて選択した.(結果)抗血栓治療群は38例,非治療群は104例であった.患者背景因子については,抗血栓治療群で年齢が高い(非治療群 平均76.9歳,治療群 平均81.8歳)結果であったが,性別・脱出長には両群間で有意差を認めなかった.手術関連因子については,抗血栓治療群で手術時間が短い(非治療群 平均130.0分,治療群 平均108.0分)結果で,手術術式選択において両群間で有意差を認めた(Gant-三輪手術/Delorme手術/Altemeier手術/開腹直腸吊り上げ固定術;非治療群 1/49/17/37例,治療群 5/16/7/10例)が,麻酔方法には両群間で有意差を認めなかった.周術期の経過および術後成績については,入院日数・周術期合併症発生率・術後直腸脱再発率において両群間で有意差を認めなかった.(結語)今回の直腸脱手術症例の検討では,抗血栓治療群と非治療群とで術式選択に有意差を認めたが,麻酔方法・入院日数・周術期合併症・術後直腸脱再発においては両群間で有意差は認められず,適切な休薬期間を設けることで安全に手術可能であり,抗血栓治療中の直腸脱症例であってもガイドラインに基づく術式選択が妥当であると考えられた.