講演情報

[R13-5]大腸癌同時性腹膜播種(P3)症例に対する治療方針の検討

大和 美寿々, 石山 泰寛, 芥田 壮平, 中西 彬人, 皆川 結明, 藤井 能嗣, 岡崎 直人, 石井 利昌, 平沼 知加志, 平能 康充 (埼玉医科大学国際医療センター消化器外科)
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【はじめに】大腸癌遠隔転移巣切除後の再発率は依然高いが,外科技術の向上や化学療法の進歩により治療成績は向上している.腹膜播種症例においては切除の意義が示されているが,P3症例の治療方針に関してはエビデンスが乏しいのが現状である.今回,当院で同時性腹膜播種(P3)を有するStage IV大腸癌に対して原発巣切除を施行した症例の治療成績を検討した.
 【対象と方法】
 2007年から2019年に同時性腹膜播種を有し手術を施行したStage IV結腸癌のP3症例63例を原発巣切除群41例と非原発巣切除群22例に分けて,原発巣切除群の治療成績を後方視的に検討した.Overall Survival(OS)はLong-rank検定を用いて比較した.
 【結果】
 原発巣切除群の年齢中央値は68(31- 91)歳で,男性20例,女性21例であった.占拠部位は右側結腸31例,左側結腸10例であった.腹腔鏡下手術は21例(51.2%)あり,その内3例が開腹移行となった.非原発巣切除群との比較では術前CEA中央値は非原発巣切除群で有意に高い結果であった(原発巣切除群 16.1 ng/ml vs 非原発巣切除群 72.55 ng/ml)(p=0.046).その他の患者背景因子に有意差は認めなかった.
 原発巣切除群の手術時間中央値は189(101-328)分,出血量は原発巣切除群で有意に多い結果であった(原発巣切除群 50.0ml vs 非原発巣切除群 5.0ml)(p=0.003).
 C-D Grade III以上の合併症は原発巣切除群で1例(2.4%),非原発巣切除群で2例(9.1%)で有意差は認めず(p=0.173),術後在院日数中央値は原発巣切除群で有意に短かった(原発巣切除群 8日 vs 非原巣発切除群 13日)(p<0.001).
 術後化学療法導入率は原発巣切除群で有意に高かった(原発巣切除群 33例 80.5% vs 非原発巣切除群 5例 22.7%)(p<0.001).
 全症例の観察期間の中央値は301(8-4759)日であった.
 3年(OS)は原発巣切除群で33.9%(95%CI:0.181-0.505),非原発巣切除群で27.6%(95% CI:0.046-0.584)であり,統計学的な優位差は認めなかった(p=0.051).
 【結語】
 同時性腹膜播種を有するStage IV結腸癌P3症例における原発切除は,比較的安全に施行されており,術後の化学療法導入率を上げ予後に寄与する可能性がある.