講演情報

[R4-2]大腸癌に対するロボット支援手術における血管クリップ関連出血性トラブルの検討と対応策

竹谷 洋1, 近藤 彰宏1, 馮 東萍1, 松川 浩之1, 西浦 文平1, 安藤 恭久1, 須藤 広誠1, 岸野 貴賢1, 大島 稔1, 隈元 謙介2, 岡野 圭一1 (1.香川大学医学部消化器外科, 2.香川大学医学部ゲノム医科学・遺伝医学)
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【背景】大腸癌に対するロボット支援手術は精緻な手術手技の実現に寄与し得る一方で,ロボット支援手術特有のトラブルを経験することがある.特に意図せぬ臓器損傷や術中出血は十分留意すべきである.本発表では当科でのロボット支援大腸手術における血管クリップに起因する術中出血性合併症を報告し,対応策について述べる.
 【対象・方法】2021年11月から2024年3月までに大腸癌に対してロボット支援手術を施行した103例を対象とし,血管クリップに起因する術中出血性合併症について検討した.当科ではロボット支援大腸手術においてHem-o-lokを用いた血管クリップを行っている.
 【結果】年齢(中央値):68歳,結腸/直腸:27/76例,BMI(中央値):22.9.術式は〔ICR/RHC/HAR/LAR/APR/Hartmann/ISR/Partial colectomy:14/12/7/51/14/3/1/1例〕LLND:13例,他臓器合併切除7例.血管クリップ逸脱による出血性合併症を3例に認めた.症例1:persistent descending mesocolonを伴う62歳男性,直腸癌に対しLARを施行(IMA根部処理したものの血流確保のためLCA温存し末梢側で再切離).病棟帰室直後にIMA末梢側クリップ脱落による出血を来たし同日開腹止血術を施行.症例2:65歳男性,直腸癌に対しLAR・LLND施行.右LLND施行時に内陰部静脈への合流枝を処理したクリップが操作中に脱落し出血を認め,出血点をバイポーラで凝固し止血を得た.症例3:66歳女性,盲腸癌に対しICRを施行.吻合後に腹腔内洗浄を施行中ICVのクリップが脱落し出血を来たし,小開腹下に縫合止血を施行.
 【考察】血管クリップ関連出血性合併症3例中2例が静脈クリップ時に発生しており,薄い組織に対するHem-o-lok利用においては外力による逸脱が特に起こりうることを認識すべきであると考えられた.対策として静脈クリップ時には,①不用意に静脈壁の全周性露出を行わず周囲脂肪組織をある程度付着させクリップする組織量を確保する,②逸脱防止に金属クリップを併用するか,エネルギーデバイスによる静脈切離を行うことを心がけている.トラブル例および対応策を供覧する.