講演情報

[O25-3]直腸脱に対する腹腔鏡下直腸固定術の検討

茂原 富美, 犬竹 平, 金城 信哉, 南角 哲俊, 小泉 彩香, 貝沼 雅彦, 高島 順平, 山崎 健司, 藤本 大裕, 三浦 文彦, 小林 宏寿 (帝京大学医学部附属溝口病院外科)
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近年腹腔鏡手術の普及に伴い,直腸脱に対する経腹手術は腹腔鏡下直腸固定術が標準術式となってきたが,その中でも,メッシュ使用の有無や直腸の剥離部位,側方靭帯温存の有無など術式は様々である.今回当院で施行した腹腔鏡下直腸固定術を施行した患者を検討する.当院ではメッシュは使用しておらず,Suture rectopexyで直腸仙骨固定法を用いている.対象は2020年4月から2024年4月までの全13例.患者背景は女性10例,平均年齢79歳,BMIは21.2であった.37歳と49歳の比較的若年患者は統合失調症や重症筋無力症の基礎疾患を有していた.病脳期間は1ヶ月から10年以上と様々であった.3例(23%)に子宮脱があり,婦人科と合同手術をおこなった.1例は余剰腸管が長いと判断しS状結腸切除術を追加している.平均手術時間は198分で出血量は2mlであった.食事開始は2日目からであり,術後在院日数は6日であった.再発を認めたのは1例(7.6%)であり後日Gant三輪+Thiersch法を追加した.
 直腸固定術のポイントは,直腸の必要かつ十分な剥離授動と引き上げ,また確実な固定方法にある.当院では直腸癌手術に準じて,直腸間膜の剥離を内側アプローチでTMEの層で開始する.腹膜翻転部まで進めていき,左側の直腸間膜も切開を加える.直腸後壁の剥離は肛門挙筋までをメルクマールとし最後に直腸前壁の切開を行う.直腸固定する位置を決め,必要に応じて側方靭帯の切離を加えている.岬角前面の仙骨骨膜と直腸間膜とを3-0 非吸収糸を用いて腹腔内結紮で縫合固定している.最後に腸管が後壁から挙上された状態で十分に牽引されていることを確認し終了とする.当院では,メッシュを使用しないため,腸管圧迫や長期合併症であるメッシュの露出・感染などを回避することができる点がメリットである.現時点では短期成績のみであり,今後症例数を増やし長期成績についても検討予定である.