講演情報
[P20-2-3]当院で経験した低異型度虫垂粘液腫瘍と虫垂癌の比較検討
鳥居 隼, 堀 雄希, 後藤 優弥, 原 諒一, 関 健太, 戸﨑 達, 岩本 久幸, 岡田 和幸, 大澤 一郎, 佐藤 知洋, 笹本 彰紀 (一宮西病院外科)
低異型度虫垂粘液腫瘍(low grade appendiceal mucinous neoplasm:LAMN)は比較的まれな疾患で,TNM分類ではTisの上皮内癌相当であることが多く,リンパ節転移はまれと考えられる.しかし,虫垂癌の可能性が否定できないなどの理由でリンパ節郭清を伴う広範切除を実施されることもある.2014年1月から2024年5月までの当院で手術を実施したLAMNおよび虫垂癌の症例について術前CT所見や術後病理の結果などを後方視的に比較検討した.LAMN13例,虫垂癌5例で,LAMNのうち術前より腹膜偽粘液腫に至っていた症例は2例であった.LAMNは回盲部切除8例,盲腸切除を含む局所切除が5例,虫垂癌はすべてリンパ節郭清を伴う回盲部切除が実施されていた.回盲部切除したLAMNにリンパ節転移やリンパ管侵襲を認めた症例はなく,術前から腹膜偽粘液腫を呈した1例を除いて明らかな再発症例も認めなかった.術前のCEA上昇はLAMNで4例,虫垂癌で1例認めた.虫垂癌の症例はいずれもCTで壁の造影亢進や不正な壁肥厚を認めており,術前から癌の可能性が高いと判断されていたが,LAMNではそのような所見はいずれも認めなかった.虫垂の径の平均はLAMN24.3mm(10-40mm),虫垂癌17.4mm(11-25mm)であった.LAMNと虫垂癌との鑑別にはCEA上昇や腫瘍径よりも,造影CTでの虫垂壁の造影亢進や壁肥厚の有無をみることが有用である可能性がある.今回検討した回盲部切除を試行したLAMNの場合は,リンパ節転移や脈管侵襲を呈した症例はなく,LAMNであればリンパ節郭清を伴う広範切除までは不要である可能性が高いと考えられた.